不乱苦

猿の惑星/キングダムの不乱苦のレビュー・感想・評価

猿の惑星/キングダム(2024年製作の映画)
2.5
過去の猿の惑星関連作品は一本も見ないまま鑑賞。

結論としては、それでも十分楽しめた。何故なら前作から数世紀も過ぎてるから続投キャラとかいないし、あらすじは前作からの続きとかつながりとか無視しても一本立ちできるような「平和に暮らしていた部族の村が独裁的な王国に焼き払われ、父を殺され家族を連れ去られた主人公が復讐の旅に出る」話だから。

つまり、猿である必然性はあまりないのだが、猿であることと、そこに「猿の惑星」であるが故の人間というノイズの絡み方によって、「割とありがちな話」を、最後まで楽しめるように味付けしているのだ。

しかし味付けとは言え、半端なことはしていない。映像は見事すぎて、驚くのを通り越してなんの違和感もなく「猿が人間かのように喋って飛び回っている世界」に入り込んでしまった。どこが実写でどこがCGなのか、全く見分けがつかない。人間との絡みについても、重要な要素でありつつも「普通の脚本に後付けした」感じが漂っていたが、「文明の進化は最後は不幸な破綻をするしかないのか」という命題をちらつかせ、ラストシーンでは、観客に考えさせるような絶妙な「引き」で締めている。

大変ウェルメイドな作品ではあったが、基本のあらすじにしても味付けにしても、猿の惑星というフォーマットを外してしまうと強いオリジナリティが見えないため、踏み込みの浅さ、物足りなさは感じた。喉越しが良すぎて、後味が薄い。後半、一瞬ギョッとさせられるシーンがある。しかし「一瞬」で終わってしまう。主人公ノアは人間メイと最後まで分かり合えない。距離が近づきそうになっても、その後やはり反発に転じる。そこはとても良かったが、であればもう少し両者のぶつかり合いを描いてくれても良かった気がする。続編が匂わされているので、次に持ち越したつもりなのかもしれないが、あるのかも見るのかもわからない続編に委ねる態度は観客に不誠実だ。
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