不乱苦

ゴジラxコング 新たなる帝国の不乱苦のレビュー・感想・評価

5.0
馬鹿も休み休み言え、という言葉があるが、休まず馬鹿ばかりやると、観終わった後にそれなりの満足感があるんだから不思議なものだ。
とにかく馬鹿馬鹿しい(なぜコングは虫歯に?)。くだらない(ちょうどいい時に、ちょうどいいものが、ちょうどいい場所に、ちょうどある)。いい加減にしろ(本作の脚本は、なんと地下空洞の太古の遺跡に全部彫ってあった)。だがこの突き抜けた馬鹿さ加減が「つまらなかった」とは言わせない。いや、つまらない気もするが、ゴジラのブレーンバスターを思い出すと笑いが込み上げてきて、「あれは良かったなあ、いいもん見たなあ、あそこだけもっかい見たい」なんて思ってしまう。
やはり怪獣映画と聞けば、全編で怪獣がドカドカ暴れてほしいわけだが、最近はそれだと馬鹿みたいな映画になるからなのか、勿体ぶったり画面を薄暗くして深刻ぶって見せる映画が多いが、本作は馬鹿だと思われるリスクをモノともせず、リミッターかけず真っ昼間から(水中戦でもやけに明るい)大暴れさせている。昔の着ぐるみ時代の怪獣プロレスをハリウッドの現代的な映像技術を駆使するとここまでできるんだぜ、というのを、これでもかと見せてくれる。無重力で大乱闘する怪獣映画なんて、今までなかったのでは。
ストーリー的には主役のゴジコンのお二人、歴史的旧跡を破壊(最近のアクション映画は毎度ローマで暴れる)、ビルも街も逃げ惑う人々を無視して徹底的に壊しまくり、橋もピラミッドも通り道にあるものは破壊して前進。更にゴジラは放射能を補給するために原発を破壊してるのだから、本当に洒落にならない甚大な被害が発生しており、特にゴジラはそもそも人間になど微塵も興味がない、勝手に建築とかして我が物顔で住み着いてんじゃねえよ邪魔だどけ、といった態度が、おいやめろと思う一方、大変に痛快だ。怪獣映画はこれでなくっちゃ。
まさかこんな映画に真面目な要素や感動的なストーリーを求めてはいなかったが(コングっ娘と義母の関係は、ひとり親としてはホロッと来てしまったが)、とはいえここまでとは。本作、子供(特に男の子)には全力で薦めるが、大人に「最近面白い映画ない?」と訊かれてこの作品を薦める気には、ちょっと……。
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