ドント

ポーカー・フェイス/裏切りのカードのドントのレビュー・感想・評価

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 2022年。大人の映画だねェ。重大な事実を抱えた大富豪が、各々で秘密や問題を抱えた旧友の中年男たちを屋敷に招待する。愛するポーカーゲームもそこそこに語られていくそれぞれの思惑、家へと迫る脅威……
 近年は『アオラレ』でブチギレたり『ヴァチカンのエクソシスト』で悪魔と戦ったりしているラッセル・クロウが監督と主演を兼任した作品で、実になんというか一流の余裕、またはベテランの貫禄を感じさせる、悠々とした映画であった。
 冒頭で少年期の悪友たちのフレンドシップをサラリと流したかと思うと一足で中年期へ、思い悩むラッセル・クロウが画廊で意味深に絵なんか見ちゃったりして、「あなたを人物画のモデルにしたいのです」と女性に言われたりした後で、一路先住民のスピリチュアルカウンセリングへ。そこから娘との交流、で、やっと友人を自宅に呼ぶ計画へ。
 どれもこれも意味深で、もったいぶっていて、言うたらキザったらしいのであるけれども、これがなんとも「幅」を感じさせる。パツパツに作り上げられた映画やノンストップの娯楽作品を矢継ぎ早に食している中でスッとこういうものが口に入ると、大変深い味わいを感じるのである。
 男の友情、ポーカー、金持ちのリッチぶり、小粋さ……そういうものを身にまとって、素直に格好つけることのクールさがこの映画にはある。こういうの、いいだろ? とニッと笑いかけてくる。そこには気負いも照れもない。スピリチュアルカウンセリングシーンはよくわからなかったが……あとポーカー要素も少なくて……
 よく出来た映画でも、狂ったように賛美できるような映画でも、唸るような仕上がりの映画でもない。が、シュッとしていてカッコいいのだ。立っているだけで様になる人間がいるように、気負わず撮られているというだけでいい具合にさせてくれる映画もある。大人の映画とはつまり、柔軟性や包容力を持ち、ゆるやかでスマートであるということだ。心の滋養になるような渋い作品であった。
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