肉体のぶつかり合いがこのシリーズ最大の魅力だけど、今作は「顔」にも唸らされた。
序盤、すべてを手に入れたアドニスとムショ帰りのデイムのコントラスト。
アドニス役マイケル・B・ジョーダンは、世界でも五指に入るイケメンだけあって、キラキラ感半端ない。貴族だ、貴族。
対するデイム役ジョナサン・メイジャーズの顔はむくみ気味で、負け犬オーラを隠そうにも隠しきれない。
しかし、中盤以降、デイムの顔は野獣のような獰猛さをたたえ始め、アドニスの美しい顔は苦悩に歪む。
アドニスがふたたびリングに登る理由が、ストーリーのポイントだと思ってたんだけど、過去と向かい合い贖罪を得るためだった。
そうせざるを得ないプロセスも説得力ある。それを可能にしたのは、デイムの複雑なキャラクター造形だろう。
弟分への優しさ、羨望、嫉妬、恨み、後悔、喪失感などなど、さまざまな感情が彼の中で渦巻いていて、アドニスもそれに飲み込まれてしまう。
それを演じるジョナサン・メイジャーズの凄み。
同じリングに立った2人は、過去からも未来からも切り離され、「いま」を共有する。四角いリングで拳を交わす2つの肉体には、神々しささえ感じる。
そして、死闘を経た後の結末は、予想通りとは言え、泣かせるのよね。
デイムのシンデレラ・ストーリーとか、アドニスの母ちゃんデイムを嫌いすぎとか、確かにアドニス薄情だわとか、いろいろキズはあるんだけど、全体的には大満足。
アドニスの物語はこれで打ち止めだけど、何年か後に、アドニスの娘を主役に新シリーズが生まれそう。