巴里得撤

瞳をとじての巴里得撤のレビュー・感想・評価

瞳をとじて(2023年製作の映画)
4.0
『エル・スール』と同様に、この作品でも映画は記憶のメタファーで、だからこそ呪いのようなものでもある。
ミゲルにとって映画=記憶は、失われたものに彩られていて、喪失感に苦しめられることはあっても、癒やされることはない。
そして、フリオは記憶ごと自己を喪失している。彼は、もしかしたら、望んでそうなったんじゃないか。皮肉なことに、ミゲルが「自分には居場所がない」と嘆く一方で、フリオは確かな居場所を見つけている。
映画=記憶から自由でありたいと願うフリオは、ラストで「瞳をとじる」。
エリセ監督の旧作同様、すべてが語られはしない。だからこその深み、余韻。
繰り返し観たくなる一作。
巴里得撤

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