つかれぐま

クリード 過去の逆襲のつかれぐまのレビュー・感想・評価

クリード 過去の逆襲(2023年製作の映画)
3.0
23/6/1@新宿ピカデリー❷

クラシカルなロッキーから、
ヒップホップなクリードへ。
大胆な路線変更で「ファンのシャッフル」に踏み切った若き監督、はじめの一歩。

クリードvsデイムの闘い。
皆さんはどちらを応援しただろうか?
私はどちらも応援する気になれず。両方に勝って欲しいと願った前作とは真逆の展開に茫然となってしまった(そもそもああなった経緯からして挑戦権はドラゴにあげるべきだろう)。とにかく熱くなれないまま映画は終わってしまった(ぽかーん)。

冷静に振り返ると、ロッキー不在のストーリーだけでなく映画のトーンも『ロッキー』的語り口を意識的に排除していた。これは(ゴシップ的に噂されるスタローンとの不仲が原因というよりも)これからの映画興行の支える若い世代へ向けて作られたヒップホップなのだろう。これをオジサンが言うと痛いのかもしれないが、”ださい「熱さ」はいらない、俺たちは「クール」に行くぜ”というようなライム。そんな文脈からして『ロッキー』だけでなく、前2作とも違いすぎる。『8 Mile』とか、それこそ『ワイルドスピード』のそれに近づいているのかも。

前2作は『ロッキー』への深いリスペクトが感じられる、奇跡的に両世代に支持される大傑作だった。だがそんなクラシカルな手法が成功するのも2010年代までと見切ったのは慧眼。あの路線を続けていたら、若い観客は離れもっと悲惨な結果になっていたと予想する。

冒頭にも書いたように『ロッキー』世代の自分には不満だらけの作品だ。しかしスターウォーズ・シークエルのように「破壊して終り」ではなく、ちゃんと新しいモノを提示してくれている。その志は圧倒的に正しいね。

淋しいけど、さよならロッキー。
そして"Be cool"クリード。