よどるふ

忌怪島/きかいじまのよどるふのレビュー・感想・評価

忌怪島/きかいじま(2023年製作の映画)
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「空間としては地続きであるはずなのに、境界を隔てた向こう側では、異なる時間軸の光景が現出している」演出は、映画版『呪怨』以降の清水崇監督作に見られる特徴のひとつであるが、VRを扱った本作では、“現実”というレイヤーに“仮想現実”というレイヤーを重ねる演出が試みられている。

同じVR空間にいるはずなのに、ひとりだけが急に異空間に放り出されるSFとしては見慣れた光景も、上記のような「“空間”をどう歪めて恐怖を演出するか?」という清水監督のホラー的な演出趣向として改めて提示されると、そこに一本の筋が見い出せる。“現実”と“仮想現実”の行き来をVRゴーグルの脱着という物理的な運動に付随するものとして描き、そのわずかな瞬間に光るアイディアを込めていたのも印象的。

最後まで観ると、そこまでVR設定を活かしきれていない気がするし、日本家屋で怪異が発生するシチュエーションもオリジナルビデオ版『呪怨2』の演出には及ばないが、創造的な姿勢は大いに感じる。個人的には、同監督が同じ年に発表した『ミンナのウタ』よりもこちらを買いたい。

余談だが、風呂場で青白い手が出てくるシーンは(一応『呪怨』が原作の)『ザ・グラッジ 死霊の棲む屋敷』を思い出した。
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