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オットーという男のogoのレビュー・感想・評価

オットーという男(2022年製作の映画)
4.0
「名優」とは、こういうことか。

トム・ハンクスの演技力に、ただただ圧倒される127分。

原作のスウェーデン映画『幸せなひとりぼっち』は未鑑賞。

前情報は入れずにシンプルに今作に向き合ったけれど、何故か、中盤までの何でもないシーンや、過去のエピソードシーンで、たまらなく泣ける不思議。序盤の寝ながら手を求めるシーンと、過去のプロポーズシーンで最も涙腺が崩壊したのは僕だけですか。

終盤の展開も、もちろん良いのだけれど、何処かドラマ化された印象で、中盤までの「やるせなさ」を上回る感動には至らなかった。

それでも、失意の中で「逃避としての死」を選ぼうとしていたオットーが、周囲との関わりの中で「新たな生」を見出しながら、自身の「新たな死」に向き合う姿は、震えるものがある。

兎にも角にも、トム・ハンクスの名演よ。

朝ベッドで目覚めるシーン、几帳面に除雪するシーン、猫との関わりのシーン、運転を教えるシーン。派手な演技は何一つしていないのに、微妙な表情や仕草を通して、こんなにもビビットに伝わってくる、オットーという人物の生き様と感情。

脇を固める登場人物の演技も見事。若き日のオットーを演じた息子のトルーマン・ハンクス、オットーの日常をメキシカンなノリで破壊する隣人のマリアナ・トレビーニョ。

久しぶりに、奇をてらわず、真っ直ぐな「映画」としての煌めきを放つ作品に出逢えた幸せ。

手を伸ばせば、そこに愛しい人の握り返す手がある。

その幸せと得難さに、気づく作品。
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