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オットーという男のSPNminacoのレビュー・感想・評価

オットーという男(2022年製作の映画)
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スウェーデン映画『幸せなひとりぼっち』はそこまで面白いと思わなかったのだが、トム・ハンクス主演のリメイクは如何に?主人公の名前がオーヴェ→オットーということでスウェーデン系を踏襲しつつ、物語の比重がだいぶ違ってた。
死を前にして走馬灯のように蘇る過去。亡き愛妻の本は同じ「巨匠とマルガリータ」。オリジナル版はスウェーデン国産車サーブが一労働者の個人史と国やコミュニティの理想と挫折を重ねた象徴で、その回顧視点が肝だったと思う。それがアメリカ版ではフォード、シボレーになるのだが、重要な要素ではない。代わりに大事なのは、小さな住宅地で暮らす人々(高齢者、移民、障害者、子ども、トランスジェンダー男性など)の多様性だ。
無愛想で気難しいオットーは、それまで妻を通して世間と繋がっていた。他人との関わり方が上手くないだけで閉じ篭った世捨て人じゃない。だからこそ首を括ろうとしながら窓の外の(彼以外は気に留めないような)他人に気づくのだ。やがてオットーは他人の粗探しより良い関わり方を自分で学ぶ。厳格な秩序を守るオットーが忌み嫌うカオス、多様に異なる隣人との関わり合いこそが人を救うのは同じだし、わかりやすく良く出来てる。野良猫はベタすぎるけど…。
それはいいとして、妻との過去エピソードがずいぶん軽くなってしまった。オリジナルの光輝くひまわりのような妻ソフィーがすごく印象的で忘れられない説得力だったので、それに比べるとこちらのレイチェル・ケラーは輪郭が薄く物足りず。オットー自身の波瀾万丈だった背景もかなり薄くなり…単に頑固老人の改心もの&愛妻ものに。
まあ、トム・ハンクス主演では若い時代にたっぷり尺を割く訳にもいかないか。1シーンだけの若ハンクスにビックリしたけど、どうやってるんだろ?いっそコリン・ハンクスが演じればいいのに。
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