KOUSAKA

WALK UPのKOUSAKAのネタバレレビュー・内容・結末

WALK UP(2022年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

もはやホン・サンスのやりたい放題!!👏

今作のトリッキーな仕掛けに対して、色々と高尚な解釈も存在するようですが、あまり難しく考え過ぎず、シンプルに「一人の男のダメダメな欲望」を脳内パラレルワールド(=ただの妄想)としてさらけ出しただけやと思います。

ホン・サンスは、現代社会の堅苦しいコンプラやポリコレ的観点からすると完全にアウトであろう「男という生き物が心の奥底に持っているゲスっぷり」を、そのまま赤裸々に(でもパッと見は超オシャレに)アウトプットするところが唯一無二の作家性だと思いますので、今作も、そういう目線でシンプルに解釈すれば、たぶん下記のような女性が存在してくれたらいいな~という、複数の「妄想劇」がただただ羅列されているだけだと思います。

「自分の映画監督としてのキャリアを全面的に肯定してくれる女性」
=ヘオク、ソニ、ジヨン

「自分がカッコつけてやってるギターの弾き語りを全面的に喜んでセクシーだと思ってくれる女性」=ヘオク

「体調が悪ければ、ベジタリアンとしての食生活を徹底フォローしてくれる女性」=ソニ

「逆に、体調の悪さは無視して、自分の欲望のままに美味しいお肉を食べさせてくれる女性」=ジヨン

「まだまだオレは映画監督としてやれるんだ!という神の啓示(に扮した単なる自己顕示欲)を全面的に受け入れて一緒に祝福してくれる母性の塊のような女性」=ジヨン

・・・という、男性側がワガママ全開で一方的に女性に求める(押し付ける)理想像の複数パターンを、ビルのB1F~4Fというメタファーを使って、パッと見オシャレに表現しただけだと思います。

もっと言うと、自分が愛人を作って離婚したせいで、ずっと疎遠だった愛娘ジョンスについても、「自分の人脈を駆使して、娘の働き口までちゃんと世話してあげられる俺ってすごいでしょ?」みたいな「一方的な贖罪」が、前半パート(およびラストのツイスト展開)だったんだと腑に落ちました。

しかも2ndパートで、せっかく紹介した働き口も、娘のわがままでオジャンになったという設定になっていて、「この俺サマがせっかく世話してやったのに・・でも娘が悪いんだからこればっかりは仕方ない」とばかりに、自分が心の奥底に持っているであろう「娘に対する罪悪感」すら、ここのパートで相殺しようとしている、ホントにどうしようもない男です(笑)。

要するにダメンズが内包する「ゲスの極み」的要素を、いかにオシャレに映画的にまとめるかという、ホン・サンスの手腕が炸裂したという意味において、やっぱり今回も傑作やなという結論に達しました。
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