去年の7月にもホン・サンスの映画を劇場で観た。
同じ監督の新作を風物詩の様に毎年楽しめるのは幸せな事だ。
今回もいつも通りのホン・サンス映画らしく取り止めもない会話が続くが、そのリズムや雰囲気にこちらが馴染んでしまっているのでなんだか心地よい。
そしてこれもいつも通りのホン・サンスらしく映画自体に構造的ミステリーが仕掛けてあり、今回はいつも以上に不可思議な展開になっている。ホン・サンス映画を観慣れていると取り止めもないと思われた会話がその不可思議を解釈する重要な要素という事を知っているので静かに進むような時間もとてもスリリングに感じる。
毎回仕掛けられているミステリーの趣向は違うが、今回は時間軸の唐突な組み換えと登場人物の白昼夢がシャッフルされていて奇妙な味わいになっている。特に現在と過去もしくはパラレルな次元同士がある一点で結合するようなラストシーンは馬鹿らしいほどシンプルなのにSF的な要素まで感じて唖然とした。