都部

ドラえもん のび太のパラレル西遊記の都部のレビュー・感想・評価

3.1
孫悟空の演劇という切り出しから、孫悟空を演じることで物語を終わらせることを強いられる羽目になる物語への接続は面白くて、序盤から中盤にかけての妖怪達の恐怖描写が打倒すべき敵としての説得力を高めているから、物語に気持ちを乗せやすいのがまずいいですね。

22世紀のゲームソフト──今の基準でいえばVRゲームである──のプレイにより、特定の物語の主人公を好きに演じられるという概要がワクワクを呼び起こす設定となっている。それが巡りに巡って、演劇で孫悟空を演じたいからという理由で、本物の振りを一同の前でする羽目になるコメディの下りが挟まってと緩急と物語の針路のはっきりとした導入は完璧。
現実とゲームの境界が崩れて、日常に非日常がぬるりと侵食を開始するシークエンスの数々は今見てもしっかり怖い。新聞紙の影越しに異形の姿を見る場面とか演劇の練習で非人間的な価値観の結末が当然のように横行して同調圧力を強いられるとか、とかく記憶に焼き付くホラー。

それより始まる孫悟空の代替としての物語の終焉を担う流れも、ドラえもんで孫悟空のメインヴィランをテンポよく打倒していく展開はそれぞれの個性が出ていて画一的ではないし、ゲストキャラクターの展開の交え方も考えられている。途中で挟まるのび太としずかが星を見るシーンがかなり良いので、話のテンションの高低も考えられてるんですよね。同じような流れになりがちだからこそ、その辺しっかりとしている。

と、ここまで語るとドラえもん映画の中でも優秀な部類と思えるが、終盤のデウス・エクス・ドラミの発動が物語の価値を損なっている。

ドラミの登場により半ば強制的に物語が終焉へと駆け足に向かっていくのあまりにも唐突で積み重ねがなく、それまでのドラえもん一同で事態の解決を図っていた作劇のある種の一貫性の結実を阻害している。助けに来る理由なんてドラえもんとドラミの関係を思えば充分なのかもしれないが、物語にずけずけと踏み込んできて解決したら去っていく姿は興醒めと言って差し支えない。おやめなさい!牛魔王!じゃねぇんだよな。その要素を除けば良好な作品なので不満は最後だけである。
最後がデカすぎる。完全に印象を上塗りされるオチなのが痛い。
都部

都部