茶碗むしと世界地図

ドラえもん のび太のパラレル西遊記の茶碗むしと世界地図のネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

 藤子・F・不二雄原作の「ドラえもん」劇場用アニメーション、1988年公開の9作目である。

 藤子・F・不二雄が存命の頃の映画シリーズの中でもこの作品のみ脚本は藤子本人ではなく、脚本家のもとひら了が手掛けていて、シリーズとしては異色作となっている。ある程度の設定は藤子も関わっているらしいのだが、それにしても妖怪が人間を駆逐して世界を征服するというのは怖すぎる。ほかにも牛魔王(声:柴田秀勝)の死ぬ描写を直接見せていたり、ファミリー向けプログラムピクチャーの枠組みでもとひら了が相当挑戦したな……と思わせる出来である。しかしながら、孫悟空がフィクションでなくなるというオチはいいし、これはわたしの解釈だが、「西遊記」の作者がリンレイ(声:水谷優子)なら面白いなと思うところがあり(リンレイは妖怪なので唐の時代から「西遊記」が書かれた時代まで生きていても不思議ではない)、ロマンティックで楽しい。

 劇中の事件の原因はぜんぶドラえもん(声:大山のぶ代)で、今だと『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』でのトニー・スタークを彷彿とさせるが、あれに比べるとドラえもんはちゃんと謝罪してるし、三蔵法師(声:池田勝)が咎めないあたりもさすがである。短いながらリンレイと三蔵のドラマはぐっとくるところがあるし、水谷優子の葛藤に焦点をあてた演技もとても良かった。