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愛と哀しみのボレロのQIのレビュー・感想・評価

愛と哀しみのボレロ(1981年製作の映画)
4.2
【午前十時の映画祭】

“人生には2つか3つの物語しかない”

初見時にはジョルジュ・ドンのボレロの素晴らしさだけで十分満足しましたが、今回はドラマ部分もしっかり観たいということでリベンジ鑑賞

結果、本作の理解がより深まってスコアアップ

ロシア🇷🇺、ドイツ🇩🇪、フランス🇫🇷、アメリカ🇺🇸の4カ国の家族二世代にわたる4つの物語が並行して描かれながら、最後に収斂していくという、シナリオ技法でいうところの“より縄方式”の代表作

そもそもこの方式のシナリオはけっこうついていくのが大変なところに加え、本作では親子両方を同じ俳優が演じているケースがあって、わかりやすいようでわかりにくい😅

ただ、そこは流石のクロード・ルルーシュ

実在の人物を引用(完全に史実通りというわけではありませんが)して理解と感情移入を容易に、さらにフランシス・レイ、ミシェル・ルグランといったお抱え作曲家の音楽でエンタメ性も忘れていません

カメラワークも秀逸

登場人物の感情の動きを追い続ける長回し(特にパリの駅でのシーン)やまるでドキュメンタリーを見ているようなショットを今回は十分に堪能

普通であれば悲壮感を引きずりそうな悲惨な出来事もサラッとした演出で描くところはフランス映画っぽい

ただ“赤十字”の描かれ方がかなり強調されていたのが少々気になりますが、そこはユダヤ人の血を引くルルーシュ監督のシンプルな思いからだと解釈しあえてスルー

愛子さまにも頑張ってほしいし😄

原題は『Les Uns et les Autres』

直訳すると『あちらのいくつか、こちらのいくつか』という意味らしいですが、言ってみれば『人生人それぞれ』みたいな意味でしょうか🤔

人と人との出会い、そして別れ

親から子へ受け継がれる思い

大戦という不幸な出来事を挟んでも世代を越えて繰り返されるそれぞれの人生

そんな一見関係がないように思える繰り返される人生と繰り返される旋律がリンクするボレロシーンのカタルシスを今回は初見時以上に味わうことができたような気がします

今この作品を観る意味

バレエという共通した素晴らしい芸術文化をもつロシアとウクライナ

ユダヤ人に端を発するイスラエル、パレスチナ問題

ゴゼジュウの作品セレクトには単に名作へのノスタルジーだけではなく、繰り返される歴史への思いもこめられていると感じることが多々あり…

これだからゴゼジュウ通いはやめられない😆

p.s.
日本語タイトル
本作公開当時は『愛と哀しみの…』がやたら流行っていたこと、かつ本作の最大の見せ場がジョルジュ・ドンのボレロだということで仕方ないことかとは思いますが、そこばかりが注目されるのはとてももったいない

これからご覧になる方は是非ドラマ部分もしっかり味わってほしいと思います

相当集中力が必要で疲れますが😅
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