Masato

ゴジラ-1.0のMasatoのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
4.8

興奮と絶望の傑作

山崎貴が戦後を舞台に新作ゴジラ映画を手掛けた。ドラクエには心底憤慨したが、歴史モノだとハズレがない彼の戦後ゴジラはとてつもない傑作に仕上がっていた。

まず言っておくとIMAX案件。音響編集が今まで見たIMAX映画のどれよりも素晴らしくて萎縮してしまうくらいの轟音が鳴り響く。

ゴジラの圧倒的な火力の絶望感がホラー要素としての恐怖感もさることながら、ひたすらに魅力的でカッコよくて興奮する。この2つが両立しているだけで超満足。素晴らしい戦争映画というものは往々にして無惨に人が死んでいく絶望と迫力ある戦いや兵器のかっこよさなどの興奮が両立しているものだが、それをゴジラに当て込めているのが良い。ゴジラの攻撃の多くは原爆や空襲などの戦争要素と重ね合わせており、日本の歴史を知っている人からすれば絶望度が段違い。上陸シーンは1954年版ゴジラを彷彿とさせるシーンもいくつかあって最高。

ハリウッド版ゴジラでは設定や舞台故にカッコよさしか表現しきれていない部分があってそれはそれで良いのだが、やはり恐怖があってこそのゴジラであるということを再認識してくれる。ハリウッドと遜色ない迫力というか、それを超えて来ているし、ゴジラの映像表現という点においては1954年版ゴジラを順当にアップグレードした形となっていて見事。何度も言うけど、ゴジラの一挙手一投足がかっこよすぎて大興奮。あの音楽が流れるタイミングも神がかってる。怪獣映画の最高峰だと思う。何度も見たい。ゴジラのシーンが少ないという声もあるが、多すぎても一つ一つの攻撃の重みが減るし、このくらいが最適なバランスだとおもう。

舞台が戦争直後ということもあり、どん底から前へ向き出そうとしているところにゴジラがやってくる。絶望感の表現は最高とは言えないが、戦後の絶望感を上手く利用しているのが良かった。

テーマも山崎貴らしく第二次世界大戦における日本軍の蛮行を土壌にして、戦争による無意味な戦いを否定し、ゴジラと戦うことを「命を懸けて戦うことはこういうことだ」と再定義する。前作のアルキメデスの大戦にも似通っているし、物語的にはクリストファー・ノーランのダンケルクに近い「命を守るための未来に向けた戦争」を描いていた。

先行レビューで批判として挙がっていた芝居のクサさは自分も感じた。下手というよりも仰々しくて古臭い。映像が鮮明になってくると芝居演出もリアルに近づかなければならなく、本作は1960年代の邦画みたいな芝居演出を再現?しているように感じられ、非常に違和感があった。でもこんなゴジラ見せてくれただけでありがたいです。感謝しか無いです。
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