藤川

ゴジラ-1.0の藤川のレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
-
ゴジラの映画を作ってくれて本当にありがとうございます。

でも山崎貴の、映画好きの中学生が頑張って考えたみたいなダサくてまどろっこしくてお節介な脚本はやはり健在で、ゴジラ大暴れのスペクタクルで感情が昂ってるところにセリフの恥ずかしさで冷や水ぶっかけられるみたいな瞬間を何度も繰り返されて嫌でした。2023年の映画で劇中2回も「やったか…?」と言わせるの正気とは思えないんですが。
オリジナルの54年から終戦直後(劇中で数年が経過してるから直後でもなくね?)っていう設定変更を以てマイナスワンって名乗ったのはまあ分かるけど、生き延びてしまったことや戦争とその犠牲を忘れるかのように繁栄していくことへの後ろ暗さみたいなものって54ゴジラと共通している上に、54の方がよほど端的に非言語的に、そしてより一層悲痛な重みをもって表現できてたと思いますね。帰還特攻兵とか孤児とか寡婦とか、そういう戦後の悲惨さよくばりセットみたいな無神経な例えを連れてこなくても、日本中の生き残った人々が筆舌に尽くし難い絶望と貧困のどん底にいたことや、忸怩たる思いの中それでもなお過去と折り合いをつけて一歩ずつ生活を進めていこうとしていたことくらい、日本人なら誰でも分かりますよ。そんなの民族としての共通の記憶であり前提だと思うんですが、つまり山崎貴がこういうお節介な脚本を書かずにいられないのは観客を馬鹿だと思ってるからなんですね。非常に山崎貴らしいと思いました。

あと、VFXはすごかったんですが、僕は巨大生物が都市を歩き回って人工物をぶっ壊しちゃう映像が好きなので、今回だと銀座のあたりをちょろっとかき乱しただけで、なんか急にキレて遠いところに放射熱線をぶっ放して終わった(地理感覚的に爆心地がどのあたりみたいな情報を明示しないのもやっつけ仕事だよな〜)ので、そこは寂しかったです。第一生命館を踏みつけてマッカーサーの腰から上を噛み砕くくらいの根性見せんかい!ゴジラ!

いろいろ文句言いましたが、でもゴジラの映画を作ってくれて本当にありがとうございました。
藤川

藤川