勝ヘレン小鹿

ゴジラ-1.0の勝ヘレン小鹿のネタバレレビュー・内容・結末

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
2.7

このレビューはネタバレを含みます

やはり山崎貴監督作品という感じ。
ドラマパートのチープさは残したまま、ゴジラを描いていた。三丁目の夕日にゴジラが出てきた様な、暗い三丁目の夕日の様な……シン三丁目の夕日、といった映画だった。

まず神木隆之介演じる主人公が何に怖れていて、何に怒っていて、何に葛藤しているのかが曖昧に感じる。本当に演出している山崎監督が凡庸で漠然とした恐怖や怒りというものしかイメージしていなかったのではないだろうか……結果として主人公の感情がブレにブレる事になって、ドラマとしては笑ってしまう程のチープさになっていた。何であんなにゴジラを恐れるのか?怖れているならなぜあんな近くの戦闘機まで行って乗れたのか?初めて見たゴジラの顔を見て何かを感じていた様だけど、何だったのか?そんな事を観客に伝える演出は終始無かった。死ぬのが怖い、ゴジラも怖い、自分のせいで人が沢山死んでしまった、自分は生きていく資格がない、結婚する資格もない、自分が幸せを望んでしまったから大事な人が死んだ、復讐するぞ、自分の戦争を終わらせる、やっぱり死ぬの怖い、大事な人が生きていて良かった、おしまい→なんじゃこりゃ…という感じ。

神木隆之介と浜辺美波が出会う場面も良くない。なぜ女性が追われている状況で神木隆之介が止めるのか?あのキャラクターだったら無関心に振る舞うか、何となく流れに乗って助けてしまうか、だと思うがなぜか止めてしまう。一時的に赤ん坊を預けられるというシーンが描きたいだけの行動だと思うし、2時間通してそういう演出が終始続いていく。2人のシーンは脚本の都合で動くから、キャラクターはよく分からない。

肝心のゴジラはどうかといえば、ゴジラの動きは思ったより良い。人間を咥えて投げ飛ばしたりする完全悪役のゴジラの暴れ方は良かった。ただ1番の見せ場の「熱線」が良くない。背中が青く光っていくのは良いんだけど、背びれが一つ一つ飛び出してくる演出がどうもロボットっぽい。メカゴジラでやるなら納得の格好良さだけど、ゴジラでは違和感を感じる。銀座上陸の時の浜辺美波とのアクションはコメディだったのかな?浜辺美波がめちゃくちゃ力強くて懸垂状態で割と耐えられる一時的な女傑になっていて、個人的には笑える演出だった。
そこでの神木隆之介登場もそんなわけねーだろ!というシーン。浜辺美波のキャラクターだったら諦めずに逃げるだろうし、神木隆之介がなぜか遠方から間に合って、しかも雑踏の中でピンポイントで見つける事が出来て、あれは脚本の都合によるめちゃくちゃに不自然なシーンの一つで、銀座上陸ゴジラの格好良さを損なう人間ドラマ。

クライマックスにつれてそんなわけねーだろ演出のオンパレードになっていくわけだけど、神木隆之介が自爆だと見せかけて脱出しているというおそらく山崎貴渾身のオチは振りに振って振りまくっているので観ていて気付かない方が難しい。そうだろうねー、という感想になってしまうので観ていない人に教えてしまっても罪は無いと思う。最後に浜辺美波が生きているのも同じく。あの爆風であんな軽症でどうやって済むのかは不思議で仕方ないけど、もちろん理由は語ってはくれないし、そんな論理的に説明できるものは何も無い。

あと子ども演出もめちゃくちゃお粗末。子どもが可愛いのに本当に勿体無いし、可哀想だった。

安藤サクラも酷い。演出が変でヤケクソだったのかな?この映画が安藤サクラのワーストだと思う。

吉岡秀隆は山崎貴監督作品常連としていつもの演技だった。いつものやつ、くらいで演出されてるのか?

ゴジラが崩れていく最後の敬礼は何だろうか……完全悪役のゴジラには必要無いという事も分からないくらいこの監督はボケているのか?と思わずにはいられなかった。
勝ヘレン小鹿

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