くろのす

ゴジラ-1.0のくろのすのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
5.0
庵野秀明が再び蘇らせ、虚淵玄がシンゴジに続け!とばかりに『いつもの』感マシマシの脚本で挑み、そうくるか〜!マジか〜!?と個人的に超驚いた円城塔先生を召喚した最近のゴジラシリーズ。海の向こうでもギャレスにドハティにウィンガードと、どれだけクセを出せるか勝負になりつつある。

そんな中での山崎貴監督起用はド安牌と言って差し支えないだろう。
主演も神木隆之介&浜辺美波とこれまた王道で、物語にスッと入る事ができる。
シン・ゴジラ公開当時に「これまでの邦画と違う!」だとか、「邦画が変わる!」など鼻息荒い感想を数多く見かけた。
それは2016年の事であり、実際邦画が変わったかと問われればノーである。庵野監督も『シン』シリーズを重ねる毎にノスタルジーさや特撮に見られる愛すべき野暮ったさを尊重する作風へと傾倒していったので、全ては観客の思い込みによるものであったとここでは考えたい。

さて、話を戻すと今作は中々どうして邦画らしさ全開の作風である。
丁寧な説明を挟むし役者陣はこれでもかと叫び、メロドラマやコテコテのシーンの乱れ打ちと言って良い。
だが、そこが気持ち良い。邦画らしさを前面に押し出し、これが私たちのやり方である!と胸を張って作られた堂々たる姿勢が垣間見える。
説明描写に目を取られていると見落としてしまう無言のやり取りも多い。特に敷島のアキコを見つめる何とも言えない優しい眼差しや迷い、また橘を巻き込むために偽の告発文書を遠慮なく撒き散らすエゴの強い一面なども窺える。神木くんの優男なイメージを上手く使った演出が面白い。

そして何と言ってもゴジラだ。海上で襲いかかるジョーズを彷彿とさせる場面や、銀座での背鰭ギミックが燃える放射熱戦。
スーツじゃできないCGならではのアイデアや演出、見せ方、迫力は本作の白眉だ。
ゴジラ映画としてもベスト3に入る面白さ!

戦後間もない日本を舞台に、人や街が少しずつ復興し敷島も幸せを掴みかけていた中でゴジラという戦争の怨念を思わせる亡霊が現れる──という筋書きが、いまを過ごし様々な現実に振り回されている自分には猛烈に、なおかつ迫真のメッセージとして響いた。
「生きなきゃな」と改めて思えるような映画作品って、人生のうちでどれだけ出会えるだろうか?
そんな映画の一本として、今作を大事に胸の中へと焼き付けておきたい。

ゴジラ自体のさらなる人気上昇だけでなくオスカーも受賞し話題も多い今作だが、願う事ならこれを機に山崎貴監督による過去作品も改めて評価されて欲しいな。
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