ゴジラシリーズは第1作から「ゴジラ」(1984)まで通して観たことはある(そこで止まってる)。正直なところ第1作以外は評価しづらい作品ばかりだ。続編からは怪獣対怪獣というシチュエーションが作られ、いつの間にか子供のヒーローになっていた時期もあった。
2000年代の初め辺りで予算がかかる割に儲からなくなってきたのか、ゴジラシリーズは作られなくなった。
だから今作は前作の「シン・ゴジラ」の大ヒットがなければ作られなかったかも知れない作品だ。その今作が国内でも順調に利益を伸ばし、海外でも信じられないくらいの高評価を得て、果てはアカデミー視覚効果賞を獲得してしまうとは誰が予想しただろうか。
「シン・ゴジラ」公開時、個人的には庵野秀明と樋口真嗣という構えは最後の砦だという感があった。この構えで成功できなければ次はないだろうなという。そして次に誰がやるのか。それは国内でCGを扱う映画の第一人者と言ったらそれは山崎貴になるのかも知れない。
しかし、個人的にはこの人の作品苦手なのだ。ドラマ作りが鼻につくと言うか、家族ごっこを見せられているような気になってしまって…。だから初めは映画館に観に行くつもりもなかった。が、評判が良さそうだったし海外の映画賞に驚くほど顔を出しているし(批評家賞の外国語映画賞に怪獣映画が候補になっている異様さ)。
観に行く決め手となったのは時代設定だ。ゴジラシリーズは基本的に現代を舞台にしている。今作は第1作の1954年をも遡って戦後を舞台にしている点。戦後の0の状態に災厄が舞い降りてマイナスに。正直これは「うまい!」と思った。
この作品の成功はこのワンアイデアに尽きると言ったら言い過ぎなのだろうか。なぜこれを誰もやらなかったんだろうと思った程だ。
個人的にはこの戦後の空気が苦手な山崎貴臭さを消してくれているように感じた(あくまで個人的にです。そうじゃない人もかなり多いようなので)。ドラマも映像もスッと入ってきて大いに楽しめた。
映像面では序盤の海のシーンがかなり良かった。あれだけ間近にゴジラの顔を体感できたのはもしかして初めてかも知れない。戦艦高雄が転覆直前にゴジラに主砲を喰らわす瞬間とかも熱い。カメラワークも良い。
鑑賞中に泣きそうになる瞬間もしばしば。
ドラマに感動しているのかな。神木隆之介の声にならない叫びはこの作品には合っていると感じた。
それとも日本の作品でここまでの映像を作ることができるようになったという感慨だろうか。
それとも高確率でヒットを飛ばす監督でありながらもどこか映画ファンから馬鹿にされてる感の山崎貴が、長い間積み上げてきたものがやっと報われたなあという想いだろうか。
何か色んな感情がない混ぜになった感動が自分の中にはあった。
苦言を呈するならちょっと全体的にバランスが良すぎるかなという点か。ドラマにしても映像にしても。だから「シン・ゴジラ」のような引っかかりを覚える感じもない。しかし、色んな層が観やすい作りになっているのでそれ故の海外評価なのかなとも思える。