うかりシネマ

ソフト/クワイエットのうかりシネマのネタバレレビュー・内容・結末

ソフト/クワイエット(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

多人種・多文化を尊重する現代社会に反対する6人の女が、白人至上主義を掲げ会合を開いていた。彼女らは白人が最も素晴らしい人種だと讃え、有色人種を口汚く差別し、「アーリア人」を名乗ってナチス式の敬礼をしていた。
次第にエスカレートしていき、アジア人の家に侵入し、「いたずら」でパスポートを盗むことを計画する。

全編をワンカットで撮影しており、手持ちカメラは常に一人を追う。そこに自分がいるかのように撮影され、ロケーションの全景が撮られることがないので窮屈で、主人公らの視野狭窄の圧迫感が感じられる。
典型的なヘイトスピーチが多用され、後半ではより過激になるさまは胸糞悪い。
どの人物も醜悪で、それでいてどこにでもいる、何なら共感さえできてしまう恐ろしさもある。

ホラー映画の被害者(主人公)のアングルで撮られる彼女らが加害者になるという反転は面白く、ここを入れ替えるだけでスリラーとしての緊張感が増している。

本物のワンカットらしいのに朝から夜に切り替わる時間経過は楽しいが、三幕は何が起こるのか全部予想できてしまうのでリアルタイム進行が退屈になってしまっている。臨場感のあるカメラワークや、第二幕が「全部予想でき」るからこそ恐ろしかったので、最後までワンカットに意味を与えてほしかった。

バッドな方向に心を揺さぶられ、それも現実に確実に存在するものが描かれているという点で、とてもいい映画だった。ヘイトクライムの対象に選ばれたのが黒人ではなくアジア人というのも、日本人としては嬉しいところ。