パングロス

レディ加賀のパングロスのレビュー・感想・評価

レディ加賀(2023年製作の映画)
3.0
◎小芝風花ひとり舞台で魅せた頑張れ!加賀石川

世の中には、それ自体が駄洒落になっていて人を笑わせる名前というものがある。

江戸川乱歩とか、槍魔栗三助(生瀬勝久の旧名)とか、立川雲黒斎家元勝手居士(談志師匠自作の戒名)とか、『ロボジー』(2012年)とか、『オケ老人』(2016年)とかが、それである。

そもそも、レディ・ガガという芸名自体、クイーンの名曲「RADIO GA GA」のもじりだし。

『レディ加賀』というタイトルは、製作者によるダジャレ好き宣言と見るしかない

まぁよくも、こんなダジャレを二重引用したような映画タイトル、臆面もなく付けたものよと多少観たくなった。
【以下ネタバレ注意⚠️】






ホントは、イオンで観てポイント稼ぐつもりだったが終わってしまったので、小津安二郎特集を観に行くついでに‥‥

結論的に言うと、石川県は加賀市の出資による加賀温泉郷と総称される山代温泉、山中温泉、片山津温泉の「温泉おこし」映画。

出来栄えは、この手の町おこし物のコメディにしては、そうは悪くない。

出演者も、そこそこ豪華。

ただ如何せん、脚本がねぇ。

ちょうど最高の映画喜劇(喜劇映画ではなく)である、小津の『淑女は何を忘れたか』に接して、心底傾倒してしまっていたところ。

小津安二郎も、成瀬巳喜男も、基本は喜劇作家じゃないですか。

小津だったら、成瀬だったら、こんな必然性も糞もないようなドタバタするだけの本、書かんよなぁ、と嘆息するばかりではありました。

近作では、山下敦弘の『カラオケ行こ!』(2024.1.23レビュー投稿)も、半島南北問題コメディ『宝くじの不時着』(2024.3.2レビュー投稿)も面白く、心から爆笑させてもらったのに、ねぇ。

大阪芸大出身ってこともあるのか、山下監督も、韓国のパク・ギュテ監督も、笑いの呼吸、枝雀師匠流に言えば「緊張と緩和」の間合いが良くわかっているのに‥‥

それにしても、妙に脈絡もなくドタバタ事件を起こして、ドラマを盛り上げた気になるってゆう地上波ドラマ仕草って、一体いつ始まったんでしょうかね。
ひょっとして、「赤い」シリーズの大映ドラマだったりするのかな。知らんけど。

タップダンスがメインというのも、まぁ韓国の『スウィング・キッズ』(2024.1.1レビュー投稿)とか、たけし原作の『浅草キッド』(2024.1.19レビュー投稿)とか、少なくはないけれど、どちらも大昔の話じゃないですか。
(映画人は、たぶんチャップリンへのリスペクトから、ってのがあるのでせうね。でも、それこそ、大昔の話。)

今どき、なぜにタップ?

という謎は解けず仕舞いでしたが、肝心のステージ自体は悪くなかった。
ステッキをデッキブラシに持ち替えての群舞は、女将修行という主題にもピッタリ。

ラストが小芝風花の堂々ひとり舞台というのも、本当に大した度胸。

で、いいじゃないですか。
小芝タップ。

サプライズの◯◯演出も見事に決まったし。

うん、悪くはない。

だけど、いくら何でも篠井英介の扱い雑過ぎ。
小劇場界随一の女形役者でっせ。

それから森崎ウィンの便利使い。
器用な人(それにしても最近映画でもTVでもよく見ますな。故郷のミャンマー、無事でしょうか)だから、チャラい役をチャラくこなしてましたが、仮にもスピルバーグ監督愛顧のハリウッド経験者でっせ。

ということで、あれこれ足し引きゼロ、ってことで、及第点ギリギリの3点なのでありました。

そうそう、本作配給収入の5パーセントは石川県への義援金に当てられるそうです。
迷った人は、劇場で是非。

《参考》
加賀温泉郷
www.tabimati.net
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