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怪物のsueのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

【2回目 2023.06.05】
2回目の鑑賞をしてきました。
かなり冷静になってみることができたので、1回目とは少し感想が変わりました。

早織はやはり強い。母として何も間違えていない。間違えていないが、それが逆に苦しめてしまうところがまた怖い。
依里の家に上がるときに、「お母さんは?」と聞いていて、家族には母がいるのが当たり前という前提がまた依里を苦しめている気がした。

保利先生に関しては、もう不憫。
学校に殺され、噂に殺され、社会にも殺された。何回殺されているのか?
少し不思議なところがあるが、教師としては正しいことをしているのに周りによって狂っていく。
その中でも自分が間違っていると認める姿には、保利の本当の姿を見れた気がした。

「ぼくはかわいそうじゃないよ。」
湊と保利の2人が発した言葉。
これは同じ言葉だけど、意味合いは反対のように感じて、
保利の場合は「僕はおかしくないよ」という意味で、湊の場合は「お母さんは大丈夫、僕がおかしいよ」という意味に感じた。

自分が思っていることが正しいと思われないかも知れない(保利やクラスメイト)、実際に認めてくれない大人(依里の父)、そしてなにより味方でいてくれる母を悲しませてしまう湊の心を考えると、やはり心がギュッと締め付けられる。

最後のシーンはやはり亡くなってしまったと感じてしまう。
天気、開けた草原、鉄橋の前のバリゲートがなくなっていて、奥には未知(=トンネル)の世界が待っている。
本当に自分の心を素直に出せて、なにも辛くない、自分を自分と認められるような世界に生きて欲しい、そう感じた。

そして坂本さんの曲がとても沁みて、最後にまた涙がでてきた。

(2023.06.03追記)
書店で発売されているシナリオブックをぜひ買って欲しいです!
補填情報があって、映画ではわからなかった背景がかなり書かれてます!!!


【1回目 2023.06.02】
最後の展開に私は涙してしまった。
1回目と2回目以降では見方が変わる映画だと思う。

怪物とは一体誰なのか。
親にとっても、先生にとっても、子どもたちにとっても全部が怪物で、本当にどこかの世界で起こってるんじゃないかと思う。

だれが怪物なのか探してる時点で、もう騙されている。

親(早織)→先生(堀)→2人の子供達の目線で話が進められて、伏線の回収がどんどんされていき、回収されていくごとに映像から目が離せなくなってくる。

堀先生の回想ではもう巻き込まれが凄すぎて、正直に生きているのに学校と社会に殺されていく姿が見ていられなくなる。本当は子供想いで、正直で、なんか不器用などこにでもいる男性。

そして子供達の回想シーン。
依里はイジメられている上に、父親から豚の脳と言われ虐待されていた。
湊は父親を亡くしているが、早織から愛情を受け過ごしている。
子供達の回想で、最初の30分で不思議だと感じた部分が全て伏線だと気づく。

秘密基地では2人は解放されたように遊んでいると、廃線が見つかる。しかしそこは柵があって行けない。そして依里は宇宙(=この世?)が爆発すれば、すべてのものが巻き戻って元通りになるという説を話し、秘密基地を宇宙に見立てて自分たちの世界を作り上げる。

しかし、ある日依里が祖母の元へ引っ越すことがわかる。親に捨てられたと冗談を言い寂しさを紛らわす湊だが、依里は違った。依里は自分自身が同性愛者と気づいていて、そのことを伝え、湊が好きだと話した。
湊は拒絶しながらも心は依里に惹かれていた。認めたいのだが、母である早織からの幸せに家族をもってほしいという願いに苦しめられていく。
でも世間から受け入れられることはない。

親からの将来家族を持って幸せになってほしいという願い、先生からの男らしくという言葉や見方、イジメ、すべてが2人の子供にとって怪物。

みんなが受け入れてくれるものだけが幸せとなっている世の中で、幸せになれないと子供達がやがて自分自身が怪物だと思い込んでくる。

なぜ自分たちは生まれてきたのか。

嵐の日、2人はチャンスだと言い、
秘密基地のある山へ向かっていく。

最後の田中裕子のセリフは聞く価値あり。
最後の展開には涙なしで見れなかった。
私は恐らくだけど、2人の子供達は死んでしまったと思う。(廃線の手前にあった柵が無い…)
子供達がこの世から開放された絵は美しすぎてもう耐えられなかった。
なにも言われない、指さされない幸せな世界を生きて欲しい。
私はこの世界でこの子達の味方で居れたのだろうか。

今日が台風で良かったと思えた作品。
(被害があるので良いとは言えない。しかし天気が雨でよかった。晴れだと湊と依里を思い出してしまいそう。)
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