ゆうゆ

怪物のゆうゆのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます


人の視野がいかに狭く偏った物差しで対象を短絡的に捉えてしまっているのか、ラッパに吹き込む息子の魂の叫びは母には不穏な音色として響きわたる。
子供たちが無邪気に連想するカードゲームのメタファー、掻い摘んだ情報だけで他者を簡単にプラスにもマイナスにもイメージ固定してしまう危うさ、主観頼みの都合のいい解釈が時に相手を怪物化させたり 自身も知らないうちに不意に牙を剥く脆さ。場面ごとに別人のような変化を見せるおとな達の緊迫した表情が面白すぎて唸る。
能面や能なしのクズに見えた人達が 視点が変われば人間味に溢れていたように 先生の恋人や獅童パパの鬼具合だってあくまで視聴者の都合のいい主観に過ぎない。パパから見た息子はほんとに醜い悪魔に映っていたのかもしれないし依里の容姿だって湊の脳内で美化されたあどけなさなの具現化なのかもしれない、まるで"きれいなジャイアン"のように。

繊細で瑞々しい危うさを携えた子ども達は「アフターサン」の少女と同じ11歳の まだ何色にも染まっていない多感な時。少年パートに入ってからの彼らの中に芽生える感情に戸惑い美しくもがく姿、坂本氏の魂に語りかけるようなメロディの癒しが重なり涙が止まらない。
他の人には決して見せない二人だけの表情 笑いあった時間 秘密の場所。彼らのなりたいもの、生きたい世界を思い繋がりあう宇宙のビックバン、新たな世界であげる産声はこの抑圧された社会へのさよならの合図なのかもしれない。
大人たちと彼らを隔てる窓の境界線、星のきらめく夜空は いくら拭っても覗くことのできない土砂(社会の闇)に覆われていた



あの彼女の「また今度ね」
予想に反していつか本当に戻ってくるのかもしれないね←ないな笑
ゆうゆ

ゆうゆ