なつこ

怪物のなつこのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.6
1日経っても上手く言葉にならない。

「誰が怪物なのか」とか「誰もが怪物になりうる」みたいなイメージで観にいったんですが、そんな単純な話じゃなかったし、そんな悪意の潜む話じゃなかった。
なんなら、悪意を持って行動してた人間は誰もいない。

母親の目線で始まる物語、母親と一緒に不安や憤りを感じながら観ていくと、教師のパートで自分の抱いてた感情がひっくり返される。

「ミセス・ノイズィ」を観た時と似て、自分の偏った感情の恥ずかしさを噛み締める。
でもこの作品の凄さは、それ自体が作品の肝ではないということ。

是枝作品とは思えない展開の速さは、坂元裕二の色だと分かる。
でもそれが気持ちよく溶け合ってる。
本作が描いてるのは、謎解きでも家族でも教育でもない。人の感情そのものだから。

田中裕子さんの存在も、予告では柄本明的な不気味さを感じていたけど、それも違っていた。

なにより、湊くんと依里くんがあまりに瑞々しくてまばゆくて、ずっと胸が苦しかった。
悲しいとか可哀想とかじゃなく、2人の純粋さが眩しさが胸をギュッと締め付ける。

「怪物だれだ」ゲームの時、ヒントを聞いた湊くんが「僕は星川依里くんですか?」って答えるあのシーンがずっと頭に焼きついてる。

音楽が映像に寄り添い過ぎていて、劇伴を意識するのを忘れてしまうくらい、曲が作品の一部に感じられた。
サントラ買ってちゃんと聴き直したい。

ラストの解釈については、観た人の数だけ答えがあると思うし、正解はなくていいと思った。
今は考察も見たくないし、ただスクリーンから受け取ったこの感情を忘れずに持っておきたいと思う。
なつこ

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