もうとにかくすごいです。
うまく言葉にできないけど、でもどうしても語りたくなってしまう。
話が進めば進むほど自分が怖くなっていった。最初は母親に感情移入をして先生たちに苛立ちをおぼえるのだけど次は先生に罪悪感をいだく。自分の思考の狭さと曖昧さを感じずにはいられなかった。
人は多面的で流動的で、相手や置かれた状況によって態度や見せる表情が異なって当たり前なのに、いつのまにかこの人はこうだから、普通はこうだよねと決めつけていることは少なくない。この映画の登場人物がそうであったように、無意識でかけた言葉や染みついた思い込みは誰かにとっては刃となってしまう。この映画に出てくる人たちは誰一人として悪気はなく、あくまで自分にとって、そして自分が思う社会にとって正しいことをして守りたいものを懸命に守ろうとしているだけだった。でもそれが誰かを、しかも大切な誰かを、かえって傷つけ追い込んでいるということが、とても恐ろしかった。だって自分も加害者である可能性を含んでいると思ってしまったから。
最後のシーンは、希望であると信じたいな。あんなに美しい世界は現実にもあるって思いたいし、二人にもそう思って欲しい。
そしてさすが坂元脚本、ディテールまでこだわられていて、一個一個思い返してあれはこうなのかなと考えを巡らせてしまう。
校長先生が言ったあのセリフがよかったな。
「みんながもてないものは、しょうもない。幸せはみんながもてるものなんだよ」（だいぶ意訳）。
ここに、たった一人の孤独な人のために書きましたという坂元さんの優しさが詰まってるなと思って泣きそうになった。いろんな人に彼の言葉が響くのは、誰しも寂しくて悲しくて辛い思いをしている瞬間があって、そんな時に寄り添って優しく包んでくれるからなんだろうな。
ジャンルは違うけれどタイタニックとチョコレートドーナツと同じように引きずっている。自分に置き換えて考えてしまったからか、映画の中の世界のような気がしなかった。是枝監督と坂元裕二、そして坂本龍一って、そりゃ想像超えてくるよなぁ。わかってはいたけど思っていた以上だった。
人生で出会えてよかった作品トップ10に入りました。
