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怪物のFAZのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.2
すごくリアル。悲しいくらいリアル。
こういう光景を幾度となく見てきたし、きっと自分もしてきたし、されてきた。

守りたいもの、自分の正義、経験や価値観、人はいろんな要素が織り交ぜあった状況で、他者の言葉を聞き、自分の中に落とし込む。

100%真実を聞き取れる人間なんているんだろうか?
誰しも主観が入るし、自分の正当性を示したいし、自分の守りたいものや親しい人からの言葉は信じたいし、自分を守るために良いように解釈をする。

そんなこと日常茶飯事だ。だからひとりからの意見じゃなくて、たくさんの人の視点で、多方面からの意見を聞かないといけない。

わかっているけど、それがなかなかできないんだよね。
だからたくさんの誤解が生まれて、真実が捻じ曲がって、怪物が生まれていく。

割と序盤で私は少年たちの真実に勘づいてしまったので、違うのになー気づいてあげてほしいなーと思いながらの2時間で苦しかった。
何気ない一言が誰かをひどく傷つけたり、明日になれば忘れてしまうような自分の発言も、誰かにとってはずっと心に残り続ける言葉だったりする。それが3人の視点で描かれることで、より実感する。

ネタバレなしでの感想を述べるのがなかなか難しい作品。でも何も情報無しで見てほしい。
とにかく脚本や構成が素晴らしかった。最後はいろんな解釈ができるような終わり方で、一度見ただけでは見逃してることもたくさんあるように感じる。
出演されてる俳優の演技は期待通り素晴らしすぎたが、子役2人の美少年ぶりと演技力に驚いた。
小学校5年生という無垢で無知な年齢だからこそ、大人の作り上げた世界で葛藤する姿に、まだこんな普通とか、一般的とかの考えに凝り固まってる世界でごめんよと言いたくなった。

怪物は誰だったのか。

それはあなたでもあり、私でもあり、無意識にすべての人がなり得てしまうことを自覚させられる映画だった。
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