MarikoSakuma

怪物のMarikoSakumaのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

正義という名の暴力があることに気づいたのはここ数年の最近の話で、それも「それ正義マンだから」とストレートに指摘されて初めて「正しいから」だけで済まされないことがあることに気づきました。けっこうショックでした。
で、予備知識なしの映画「怪物」。
ほぼ全員(星川くんの父以外、、)に感情移入できてしまう設定もすごいけれど、ゆえやり場のない苦しさ、、闇深い。。

小さい頃から母親に「お父さんは法から人を守る正義の味方なんだよ」といわれたわたしは、たぶん人1倍に「正しい行い」を意識しながら育ったとおもいます。クラスに泣いている子がいたとき、理由も聞かずに弱者だと決めつけ庇う担任を「正しい判断が出来ない大人だ」と感じていたし、相手を尊重しない恋人の要望は「自己中心的」だと思っていました。
それらが間違っているとかじゃなく、ただ自分の方が正しいという「思いこみ」は恐ろしくたちがわるい。良いと思った言動も相手が受け取ったカタチこそが残酷なまでにその言葉の本意になってしまう。。保利先生の「男らしく」も安藤サクラの「普通にしあわせになって」もきっと表情からそんなに深いイミはないんだとおもいます。日常の中で気づいて和解できればいいけれど、そう単純でもなく、、ほとんどは真意が明かされないままその人の中で歪みながら育っていくんだと思います。

自分を守るためにふたつの顔をもって後にそんな自分を責める人間臭い麦野くんの一面に共感したり。宇宙のように自分たちも生まれ変わるのかなとか、狭い基地の中から外の知らない広い世界を想像してみたり。靴のない星川くんに片割れの靴を渡して一緒にケンケンして帰ったり、子供ならではの思いやりの形が微笑ましくて、、ふたりの世界を描くシーンは苦しいけれどどれも美しかったです。
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