ふたりの少年と、母親と、父親、それから教師。ごくごく狭い社会の中で蠢く人間の業のようなもの。人の心の深淵を覗き見るような、そんな不思議でどこか不愉快で異質な感覚が残る。
個人的にストーリーがループするのは推理系以外は苦手なのでちょっと見ててしんどかった。人の視点によって物事が変わる、というのは分かるけどこの表現でなくてもよかったのでは。
子役のふたりは自然体ですごくよかった。あと、安定の安藤サクラさん。最近どんな役やってても目を奪われてしまう。見えない存在感が確実にある。
典型的な大人たちのエゴと、それにうんざりして解放されたい子どもたち。誰もが大なり小なり経験したような感覚を、今の社会的な問題に嵌め込んでくる辺りすごいなぁと思う。一方でやっぱり、この映画の本質的な要素としてジェンダーアイデンティティーは無視できない。たとえ知られたくない側面だとしても、そこを否定するのは違うと思う。特に子ども世代のそれはいわゆる気の迷いだとか勘違いだとか、そういう風に捉えられがちで、どちらが正しいかは未だに分からないし、だからこそ問題になっていること。カンヌでの経緯はあまりよくわからないけど、最後まできちんと向き合ってほしさはある。
