このレビューはネタバレを含みます
あーーー良かったな。邦画の最適解はこれだと思う。ド派手なCGとか壮大な物語とかじゃ勝てないんだよな、その代わり日常に潜むほの暗さ、人間誰しも抱える闇みたいなものを淡々と描いていくのが良い。好き。(まあ坂元裕二脚本が元々好きなのもあるけど。)
予告やポスターの時点では「怪物だーれだ」って観客に犯人探しをさせる分かりやすいエンタメを提示し、蓋を開ければ「でも現実には分かりやすいラスボスなんていないんだよ、断片的な伝聞だけで勝手に自分に都合の良いストーリー組み立てて、気持ちよく叩ける犯人探しをする人間こそが怪物、つまり怪物はお前！！！！」と観客をぶん殴ってくる脚本。
それでいて、後半のみなと&よりパートはもう怪物探しは関係なくて、美しくも儚い2人の関係性を見せるパートになる。
そのお話の筋が途中で予想していた既定路線とは全く違う方向へ走り出し、最後に元の路線に戻らずに発散していく感じも坂元裕二脚本って感じだ。
そんで、坂元裕二脚本にありがちな、ともすればアニメっぽくなってしまうクサいセリフをこんなに自然に言えてしまう子役、何者？？？あれ、坂元裕二のセリフを違和感なく言えるのって松たか子とか柄本佑とか満島ひかりとか阿部サダヲとか大人の役者でも演技派と言われる役者だけだと思うんだけどな、特によりくん役の子、こういう子「いそう」じゃなくて「いる」って思わせる、演技に説得力があってすごい。
ラスト、大雨のゴーーーッという音と電車が走るゴーーーッという音がリンクして「出発の音だ！！」となるの頭抱えたし、2人が「生まれ変われたかな？」って出てくるところはもう、もう…
あれは、出た先にお母さんも先生もいないし、異常に彩度高いし、線路にあったはずの柵がないし……彼らは「超えて」しまったということなんだろうな。
2人の関係性を美しいと思ってしまう自分も十分怪物だよなと思ったり。
一点、カンヌ国際映画祭でLGBTQに関する映画の賞をもらったというニュースを聞いてしまっていたことに後悔した。
知らずに見てたらもっとゾワゾワしたと思う。
カンヌにネタバレ喰らうて。
