このレビューはネタバレを含みます
是枝監督の最新作であり、脚本を坂元裕二さんが担当しているとなると、それだけで期待してしまいますよね。その上、カンヌ映画祭で脚本賞を受賞したということで、期待値は更に上がるばかりです。
ががががが！！！
どんな内容かネタバレを極力避けてきたのに、楽しみにしてたのに、カンヌの「クィア・パルム賞」を受賞した為、そのニュースで同賞がどんな賞なのかの解説をされてしまったので、思わず唖然としてしまいました……。いやそれ、ネタバレやないすか……。
そんなわけから始まった今回の鑑賞ですが、それでもネタバレを避ける為に公開初日に劇場に駆け込み正解でした。確かに同性愛をネタの一つにしてはいましたが、それ以上のものがこの映画にはありましたので。
ただ、それ以上のものって、今回の場合良い意味ではないんですよね。
映画は三者の視点から描かれるわけですが、一人目の母親、二人目の担任まではまだ良かったんです、わたしの中では。そこまでは一級のミステリとして不穏な空気を孕んでいたし、キャストさん素晴らしいし、三人目となる子供たちの視点で何が明かされるのかとドキドキしたものです。どんな心を抉る真実があるんだろうと。
ところが、子供たちの視点になると途端に作風が変わったような気がしました。それまでの不穏な空気はやや薄まり、なんだかふわっとしているような、悪い言い方をすれば解釈お好きにどうぞー的に丸投げされたような気がしたのです。
昨今、とにかく全てを解説したりセリフで説明しないといけない作品が多く、逆にそうじゃないとダメっていう空気が漂う中、この作品はまさに多くを語らない作品だと思います。行間を読むというか、間を楽しむというか。それがなんだか違和感……。
あれ、わたしも説明ないとダメな空気に慣れすぎちゃった……？ 毒されれすぎちゃった……？ とも思いましたが、いやいや、それにしてもなんだろうこの違和感は……と、中々良い印象を持つことができませんでした。映像の綺麗さが逆に際立ちすぎてて、特にラストは「なんだかわからないけどとにかくハッピーな画を見せておくよ」と言っているように感じられてしまい、モヤモヤっと……。
誰がどう怪物なのかって色々と受け取ることはできると思うんですが、そこに「息子が（生徒が）同性愛者だと知った」と、それに対する「無関係な人を巻きこんだ」の視点ってそれほどなかった気がするんですよね。まあ、子供たちの方はまだ小学生だし、それほど悪意も他意もない、大事になるとは思っていないことが大事になるってことはあるかと思うんですけど、大人の方は描けたと思うんです。同性愛が悪であるって、その偏見が描かれてるのって中村獅童さんだけで、その描き方って結構雑な気がして……。なんだか、美しいところだけ切り取ろうとしてません？って感じがしてしまったんですね。エグく描いているようで実は避けてますよね、美しく見せて誤魔化してますよね、って印象がどうしても拭えなくて、最後に向かうにつれて少しずつ乗れなくなってしまいました……。
とはいえ、終始流れる不穏で徐々に沈んでいくような空気、それを引き立たせるキャストさんの見事な演技と音楽、美しい映像などは見事で、最後まで飽きない映画でした。さすがだなってくらいに自然な演技を引き出された子供たちだけでも見応えあるかも。是枝監督、凄いですよね。
