ゆりな

怪物のゆりなのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.0
終始「🥺」の顔で観た。
誰もが加害者になりうる、悪意のない一言が誰かを傷付ける。

「怪物」というタイトルを付けなくても、この作品は成立したけれど、でもそこで「怪物」とつけ怪物ゲームまで展開させたことが凄まじい。

坂本龍一の音楽ってやっぱりすごいんだな。
「MINAMATA」もだし、美しい音楽や印象的なサントラたくさんあるけれど、それでも群を抜いて心に残る。
(しかも、このときには体力的にももう曲作り大分厳しかったそうで。)

是枝監督の映画はいつも大雨で、弱者が描かれている。
貧困やLGBTQや新卒の先生にシングルマザー。
社会的に見て少し立場が弱い(と言われている人たち。言われているだけで、もちろん私はそうは思わないし当てはめたくない)人たちこそ、光り輝いて幸せになってほしいのに、なんでなんだろうね。
でもそれって一番、貧困で両親の仲が悪かった私がよく分かるはずなんだよね。

いじめのシーンはいじめが絶妙で、昔の少年漫画みたいに分かりやすいものじゃないだけに、胸がキュッとなった。いじめだけど「いじめじゃない」と言われたくもないような

主演の2人は、撮影に入る前に「銀河鉄道の夜読んでね」と言われたとのことで、ラストシーンに繋がるのも良かったし、宮沢賢治が分かるって日本人ならではの楽しみ方ができるのも嬉しい。

ややネタバレしながら見てしまったので、まっさらな状態で、映画館で缶詰で観た方がよかった。
そして2時間すでに短くない尺だが、もう少し3視点の物語を長くじっくり見たかった。


以下ネタバレ

・安藤サクラ演じるお母さんが「あなたが幸せな家庭を持つまでは」がプレッシャーとして描かれている点に違和感。
LGBTQのことを指したいと思うのだけど、同性愛者だって子どもを持つこともできるし、(海外にはなってしまうけれど)結婚だってできる。
まぁでも本来なら『「幸せな家庭」なんて持たなくても、独身でも幸せでいてほしい』と願ってほしいよね。

この辺りは、町山智浩がTwitterで”『怪物』は、思春期前の同性同士の親密さを「同性愛」という枠に押し込んでしまうという、まさに『CLOSE/クロース』で批判されていることをやってしまっている映画”と言ってて、分かるなぁと。

ただ是枝監督的にはLGBTQに焦点を当てたかったのではなく、家族の物語を描きたかったとのこと。

・大人にとっては「学校」「校長」「生徒」それぞれが怪物の対象だったけど、主役2人にとっては「怪物だーれだ」は合言葉であり、ネガティブワードじゃないんだよね。

・先生の一生懸命さが沁みました
ゆりな

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