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マイ・エレメントのmitoのレビュー・感想・評価

マイ・エレメント(2023年製作の映画)
3.9
2023年86本目。
元素が住む街エレメント・シティへ移住して来た火のエレメント一家、マイノリティな元素でもあり肩身の狭い生活を送りながらも成長した一家の一人娘エンバーはいつか父の店を継ぐことを夢見ていたが…。

元素の人口分布がアメリカのそれを風刺しているのは明らか。
とは言いつつも、元素のポップなビジュアルやアニメーションの軽快さが、重たい社会的なテーマをかなり緩和している。
前作の私ときどきレッサーパンダの「2次性徴期も含めた少女が大人になる」課程を描いたのもそうだが、この中和の仕方はPIXARの得意技。
本山のディズニーがこれが苦手な印象があるので、そういった部分のケアは流石PIXARだな、と感じた。

話としても白人モチーフと思われる水のエレメントとマイノリティの人種との邂逅を鼻に付かないラブ・ロマンスで描くなどシンプルながらシリアスになり過ぎない大人も子供も楽しめる内容で、分かり易い泣きポイントでつい、自分もうるっと来てしまった。

個人的にはここまでオブラートに包んで人種問題を提起するという高度な事をさも当然にこなすPIXARのレベルの高さに只々感心した。

少しモヤッたのは2点。
1点目はストーリーの強引さ。
恋愛要素は上手かったものの、本筋のエンバーの父親の店の存続問題や、その根底にある街の水路の劣化問題の対処や展開が杜撰過ぎる。
ファミリー向けと言えど、エンバー父の違法建築は看過できない過失だし、水路の劣化を素人の補修でOKを出す役所もおかしいし…強引といえばエンバーの本当にやりたいこと問題も唐突。
そういった描写と無いのに急に「本当はお店を継ぎたくない」と言われても…。
「エンバーはそんな事お首にも出してなかったよね」とツッコミたくなった。

2点目は人種問題の側面。
描写が上手い反面、これをマイノリティ視点で語っていることのモヤモヤ感はあった。
自国の苦境で移民を余儀なくされたまでは同情するが、マジョリティに敵意を向け同じ元素のコミニュティに籠もって先鋭化していく…。
互いの邂逅がマジョリティ代表として登場する水のエレメント、ウェイドの人柄によるものに大分依存しているので、少しだけ「これは互いに理解し合った和解なのか?」という思いがよぎった。

ネガティブな感想が長くなってしまったが、個人的には好きな部類に入る作品だし、レベルが高いのは変わりない高レベルなアニメーションで非常に楽しめた。
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