鷲尾翼

波紋の鷲尾翼のレビュー・感想・評価

波紋(2023年製作の映画)
4.0
【まとめシネマ】#1109

【まとめ】
* 筒井真理子の希望と絶望
* 絶望を生み出す強烈な辛苦
* 私が信仰する絶対的理由

筒井真理子演じる主人公は、ある新興宗教を信仰している主婦。長年失踪していた夫が、ある日がん治療の費用目的で戻ってくるところから物語が始まり、パート先での理不尽な出来事や障害のある彼女を連れてきた息子との葛藤など、大小様々な絶望が主人公を襲う。その絶望を解消するように、どんどん新興宗教に希望を求めてしまう姿は、強い説得力が伝わる。

本作で印象的なのが、先ほど語った主人公を襲う様々な絶望の瞬間の数々。前半は、理不尽な出来事や不愉快に思ってしまう演出が多々ある。例えば、失踪してからふらっと戻ってきた夫の生活態度が最悪だったり、パート先のスーパーでは理不尽に半額を要求する客に遭遇したり。

そして、後半になると主人公の異常性が強く映る。
主人公が招いた必然的な孤独に加えて、風刺の効いた社会派なメッセージ性が強烈に加わり、孤独や絶望に思うネガティブがどんどん濃密になっていく。

本作を見ると、新興宗教に対する嫌悪感や薄れていく。主人公に襲いかかる絶望や不幸と向き合うには、どこかスピリチュアルの必要性を感じてしまう。やがて、熱狂的に信仰していく主人公が迎える結末は、希望に向かう解放だろう。
鷲尾翼

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