映画大好きそーやさん

きみの色の映画大好きそーやさんのレビュー・感想・評価

きみの色(2024年製作の映画)
3.6
〈2024/7/7加筆修正〉
ジャパンプレミアに当選致しまして、一足先に観させて頂きました。
広い会場かつ登壇者も豪華だったため、内容面への期待感も最高潮まで高まりました。
主要キャスト陣と一緒に登壇した、山田尚子監督は終始緊張しているように見られ、本作にかける思いも一入なのだろうと、監督同様私も緊張しつつ、スクリーンに映し出された『きみの色』の世界へと入っていくこととなりました。
さて、余談はこれくらいにして、早速本編へと参りましょう!

キラキラと瑞々しい、山田尚子節全開の青春ムービー。
公開前なので詳細な情報は控えますが、個人的な印象で言うと、想像していたものとは少々違ったものを見せられた感覚でした。
第一、私は今年公開されるアニメーション映画の中で、本作が1番公開を待ち望んでいた作品でして、人一倍鑑賞に対する熱量がありました。
何度も予告編を観ていましたし、周囲の友人たちにも繰り返しその名前を出して、布教活動も行っていました。
だからこそ言いますが、予告編で流れる「水金地火木土天アーメン」的な音楽で彩られるバンド映画のチューニングで観ると、かなり困惑すると思います。
これはあくまでうら若き少年少女たちによる、刹那の煌めきを描く青春ムービーというジャンル分けが適切です。
というのも、バンド活動も構成要素の1つではありますが、それは彼女たちの青春を支える器であり、中身は列記とした若者の抱く心情、感情の機微を追うと言ったものになっていて、バンド活動のシーンはおまけ程度にしか描かれません。
よって、予告編で印象的に使われていた「水金地火木土天アーメン」はどういった過程でできたのかや、如何にして演奏技術を身に付け、ステージに立つに至るのか等々という、バンドを題材にした作品の醍醐味的展開を求めて観ると、拍子抜けしてしまう可能性が高いです。
表面的なところで言うと、京都アニメーションを思わせる、細く柔らかな線が特徴的なアニメーションは観ているだけで眼福でしたし、アニメーションだからこそできる繊細な心理描写も随所に光っていて、その表現一つ一つに瑞々しさを感じました。
「水金地火木土天アーメン」ばかりが目立っていましたが、他の劇伴や楽曲も良いものが集まっていて、チューニングさえ間違えなければ楽しめると思います。
詳しくは書きませんが、「合宿」のシークエンスの多幸感は素晴らしく、完璧とは言わないまでも観たいものが観られた気がしました。
また、最後のトツ子の描写も、エンタメ映画として申し分のないカタルシスが演出できていたと思います。
少々薄いですが、この辺りでネタバレなしのレビューは締めとさせていただきます。
一旦のまとめを書いた後に、ネタバレを含みつつ、ネガティブめな感想を書き残しておきたいと思います。
気になる方だけ読んで頂けると幸いです。
総じて、山田尚子が見つめる少年少女の躍動が、フィルムに鮮明に刻み込まれた作品でした!

※さて、ここからは私が個人的に気になった点を列挙して参ります。
余計な心配を増やしたくない方は、読まないことをオススメします。
前述した通り、ネタバレも含みますので、お気を付け下さい。
では、いきます!
まず、演出面についてなのですが、殆どのシーンで人物を右端か左端に寄せていたことと、ピントをぼかして調整して、またぼかすといったカットを多用していたことは観ていて、どんな意図があったのだろうとシンプルに疑問に思いました。
別映画作品のカットを真似たのか、明確な意図があってそうしたのか、鑑賞してからかなりの時間が経ちましたが、未だに分かっていません。
後者については心情の揺れ動く様を視覚的に演出したという解釈でも問題ないような気がしますが、前者に関してはいくら考えても答えが出てきませんでした。
もし前者の演出意図が分かった方、有力な説をお持ちの方は、コメントしていって頂けるとありがたいです。情報、お待ちしています!
次に設定に関して、トツ子が幼少期にバレエをしていた設定が死んでいること、案外3人の抱えた問題があっさりしていたことの2点が、特に気になりました。
バレエをしていたことによる効果と言えば、アニメーションとしての運動要素に踊るという選択肢が入れられたこと、そして、「合宿」の際に、スポットスポットで象徴的に引用されていた「ニーバーの祈り」に響く、「変えるべきものを変える勇気」が3人でいることによって果たされるということにしか作用していません。
バレエをしていたことによって、無理やりドラマを作りたいだけのように見えて、個人的には萎えたポイントでした。売りたい欲が垣間見えた気もして、少々引いてしまった自分がいました。
また、「合宿」のシーンでそれぞれの内に秘めた思いを共有する訳ですが、そこまでずっと引っ張っていたにも関わらず、それほど複雑なものでもなかったため、どうにも期待値を超えられずただひたすらに残念でなりませんでした。
きみの兄のことや、ルイの家族の闇が匂わされていただけに、もっと大きなドラマが見られると思い込んでいました。
最後に、音楽面に関しても言いたいことがありまして、最後にトツ子たちのバンドがライブをするのですが、そこで披露される楽曲の調子に違和感を覚えたこと、ご都合的に処理される過程が多いことの2点がノイズとなって、せっかくのカタルシスを上手く味わうことができませんでした。
最後のライブでは、ルイ、きみ、トツ子の順番で、それぞれが作った楽曲を演奏していきます。私が飲み込めなかったのはルイの作った楽曲で、彼はおっとりした性格で、優しいイメージだったにも関わらず、その印象とは真逆のロックな楽曲を完成させていて、さっぱり意味がわかりませんでした。そこは、流石に雰囲気を一致させておくべきだったと思います。
また、最後の楽曲で皆がステージの前に集まり、シスターやきみのおばあちゃんがダンスをし始めるのですが、その運動が最後の曲になって唐突に起こるのが違和感しかありませんでした。
もっと1曲目、2曲目と徐々に盛り上がる過程を見せ、人物たちの心情を丁寧に描写してほしかったです。
あと、トツ子はミッション系の学校の生徒であるが故、異性間交流は禁止されているような由が説明されていたのに、当の学校で開催されたライブに何も言われずルイが参加しているのも、ハッキリ言って謎でした。
長くなってしまいすみませんでした!
今回はこの辺りで留めておきます。
観た方で同じことを思った方や、反論したい方、他の意見がある方はコメント下さい!
ぜひ議論したいです。
よろしくお願いします!