福野ふくろー

きみの色の福野ふくろーのレビュー・感想・評価

きみの色(2024年製作の映画)
4.8
山田尚子最新作。予告やポスターを観ると、一見、よくある可愛い女の子がバンドをして、甘酸っぱい男女の恋が描かれるように見える。観る前は「大丈夫…?」と警戒しながら観に行ったんだけど、そんな心配はなかった。とにかくよかった!!
















意図的かわからないけどミスリード。きみはきみちゃんだった。

•繊細さ
とにかくセリフが少ない。これが本当にいい!!説明ゼリフはこれでもかと排除され、必要なセリフだけで構成されている。場面も、表現したいところだけを抽出したよう。だからこそグッと引き込まれるし、一瞬一瞬を見逃したくないと思わせてくれる。
そこにしっかりと、人の温度、空気がある。なので、邦画とアニメの中間のような肌触りを感じた。これがすごく心地いい。

•アニメアレルギーへの配慮
最近の山田尚子監督の作品に通じてるのかもしれないけど、アニメ独特の臭みみたいなのを消してくれている。
よくアニメは、登場人物が全員痩せてて色んな方向で可愛いかったり、お茶目、おしとやか、まじめ、クール、のようなものがデフォルメされすぎたキャラクターが登場する。
でもこの作品はそれが薄い。主人公はほんの少しぽっちゃりでどこにでもいそうだし、それ以外のキャラクターも無理やりデフォルメされた感が薄い。なくはないけど、その配慮があるためかなり観やすい。しっかりそこに居る人間として見ることが出来るので、没入して感じることが出来る。

•色彩のきれいさ
色がテーマなだけあって、全てのシーンが色にこだわってあり綺麗。芸術。
山田尚子監督の他の作品でも、色を抽象的に使って感情を表現する、というのをやっていたけど、それの到達点のよう。色をつかって、音や波などいろいろなものを表現する。そこから、似た形のものへシーンがシームレスに移っていくのも目がすごく気持ちいい。

•文学性
これは感覚の話だけど、文学みもすごい感じることができる。哲学の話が少し出てきたり、教会のある高校の寮という少し異質な空間を描いているのも、より深く知りたくしてくれる。頭の中で思考を深めたり、調べてより理解する余白が多分にある。それをこんなに心地いいアニメ映画に盛り込んだことはすごく意味のあることだと思う。

•キャッチーな楽曲
監督は、音楽に関する作品が多いけど、今回もすごい。水金地火木土天アーメンのフレーズだけで持ってけるのすごい。相対性理論ってバンドのギターの方がやってるらしく、たしかに相対性理論ぽい!耳に残るし、めちゃくちゃかっこいい。ノれる。
でも、もう2楽曲はめちゃくちゃ意味深。一回じゃ全くわからない。でも気持ちが入ってるのは伝わる。だからなぜかわからないけど涙が溢れてくる。

取りこぼしありまくるだろうけど、思いつくだけでこれだけある!
まったくまとまりきれてないのに涙出る体験した。もっとこの世界観に浸りたくて、最後終わるなって思うくらいよかった。映画館で見れてよかった。「どうにかなる日々」ってオムニバスアニメの作品みたいだった。もう一回みにいこ。