しゃけ造

日の丸~寺山修司40年目の挑発~のしゃけ造のレビュー・感想・評価

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カリスマと同様、面白い着眼点を持った作品。毎度街頭インタビューのズケズケ感は少し胸がキュッとなるが、真のインタビューをするにはこの方法意外にないのではとも思う。
象徴的だったのは、寺山時代にも行っていた、「家族とお国とどっちが大事ですか?」という質問。当然現代では家族が大事と言われていたが、その理由として「家族があっての祖国」と言う人がいた点。寺山版では、逆に「お国あっての家族」と言う人もいた。これは、戦後の日本人のお国感の移り変わりを表しているようで、ピースがハマった感じがあった。戦後、日本の象徴たる天皇が人化し、戦争で死んだ英霊たちは、その死の目的を失った。柳田國男がその意味を「イエの存続」に求めたのは有名な話だが、そうした意識改革の結果が、この問の答えに出ていると思う。戦前では、天皇を父とした国家家族が前提にあり、故に「お国あっての家族」であったが、戦後は家族と国家は明確に分裂した。故に、もはや「国と家族」の比較は意味をなさない。そのような点で、かなり有意義な質問に思えた。