垂直落下式サミング

日の丸~寺山修司40年目の挑発~の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

3.5
元ネタの女性インタビュアーに負けじといきなり突撃スタイルが挑戦的。「インタビューよろしいですか。」「今ちょっとお時間よろしいですか。」この断りが無いから、最初立ち止まらなかった男性と同じでヤな気分になるのも解るけど、意外とそこまで不愉快じゃない。
マイクを向ける監督の人の風体が、品がいい感じだからかしら。実際、インタビューの後で、「私、TBSテレビの者なのですが…。」って言うシーンも見せるからひと安心。今は一般人のメディアリテラシー高いっすからね。これに写ってる人は顔出し了承済みなんですよって免罪符が、空気を軽くさせる。
一番好きなのは、途中で出てくる振り袖を着た女の子。自身はハーフだという彼女の受け答えが素敵でした。パーティで日の丸を振ったというパンクなエピソードのあと、君が代はいい詞だと凛として答える姿は知性に溢れてて、現代人も捨てたもんじゃないじゃんって思わせてくれる。
そのあとのアイヌ文化を継承する活動をしてる女の人のところは、途中からごちゃごちゃしててイヤ。自分のなかに答えがないことに、どうにかこうにか答えようとしている人のたどたどしい弁。
たいした答えが出ないのわかってるのに、相手が話し終わるの待ってる時間は、どうしてもいたたまれなくなる。だからって、インタビュアーが割って入ってくるのもよろしくない。ここは黙っとけ。ノンマルトの使者に繋げたいだけじゃん。
後半は、寺山修司と仕事したというジジババの言うことだらけだから、もっとつまんない。当時の関係者に会いに行くのもいいけど、その人たちにも分け隔てなく「日の丸」について聞いとくんねえよ!
寺山修司。アイヌ文化。ウルトラセブン。サブカルチャーとヒストリーを目配せインサート。これを、かさ増しに使ってる風なのが小賢しいなって思っちゃう。
もっと、一人でも多く色んな人の声が聞きたかった。もっと、あの振り袖ちゃんみたいな生きた知性に触れたかった。
わりと面白かったけど、結論ありきな感じ。報道畑じゃないテレビマンが作ったのねって感じの典型的なドキュメントだったのが残念。次は選り好みせず、ガツンと一万人くらいに聞いて回ってほしい。


【※】僕がインタビューされたら、こう答えるかも。クソの受け答え過ぎて絶対使われないと思うが、駅前で声かけられたって想定で一応シミュレーションしてみます。

Q 日の丸と言ったら何を思い浮かべますか。
A 国旗です。

Q 日の丸の赤は何を意味していると思いますか?
A えっと、わかんねっす。

Q 日の丸はどこに掲げたら美しいと思いますか?
A 見苦しくない場所ならいんじゃないですか。別にどこでも。

Q 祖国と家庭とどちらを愛していますか。
A ノーコメントかなぁ。愛とか口に出すの恥ずいじゃないすか。

Q 外国人の友達はいますか。
A はい。仲いい友達がタイとのハーフの人でぇ、あとは中国人と、ブラジル人と、先輩がアメリカで結婚してて、あ、疎遠だけどカナダ人もいました。います。いっぱいいます。

Q 戦争になったらその人と戦えますか。
A えー、戦争とか湿っぽくて嫌いだね。

Q では国に背きますか。
A ま、いんじゃないすか。そういう人多いと思いますよ。

Q あなたは日の丸を振ったことがありますか。
A ないっす。

Q あなたは日の丸が日本の国旗であることに誇りを持てますか。
A はい。

Q あなたは君が代が日本の国家であることに誇りを持てますか。
A はぁい。

Q あなたが日の丸に対して思うことを一言で言ってください。
A 特にないかもです。国旗です。いぇい。