そるとり

658km、陽子の旅のそるとりのレビュー・感想・評価

658km、陽子の旅(2023年製作の映画)
4.0
コミュ障気味の主人公が、ヒッチハイクで出会う人達との交流を通して自分を見つめ直すロードムービー。

私はどちらかと言えば主人公側の人間だから、「わかる、わかるよ…」って感じの場面もあったり。
自分でなんとかしなきゃいけない時でも、受動的過ぎて上手く身動き取れないところとかね。
口数が少ないわりに、自分が嫌なことをされたり思い通りにならなかったりした時の感情の出し方が子供みたいで、精神が未熟な感じが出てていた。
泣き叫ぶシーンは特にすごい。
菊地凛子の演技を見るのはほぼ初めてだけど、上手かったなあ。

福島で出会った老夫婦の優しさに触れたあとに今までろくに喋れなかった陽子が片っ端からその辺の人たちに声をかけるんだけど、今までコミュ障で受動的だったぶん人との距離感がおかしくて、上手くバランスが取れていないのがすごくリアル。
大声を張り上げて必死に人に縋る姿は異様にも思える。おもちゃを買ってもらえない子供を思い出した。

津軽弁をはじめとした東北訛りがみんな自然。
自分は青森出身なので訛りが変だと気になって集中できないけど、この映画はかなりレベル高い。
青森以外の人には伝わらない難しい方言は使わず、あくまでイントネーションを重視してるのも良かった。
菊地凛子の、「青森を出て20年地元に帰ってないことが伺える少し標準語混じりな津軽弁」が良い。わざとなのか偶然かはわからないけど。
後半の陽子が独白する場面の「亡ぐなって」がパーフェクト訛りで痺れた。

あと、竹原ピストルがあまりにも青森のおっちゃん過ぎる!びっくりして「この人青森出身だっけ?」と調べたけど違った。ミュージシャンで耳が良いから訛りも完璧なのかな。

ハマケンはこの手の気持ち悪い役うまいよね。