そるとり

ミッシングのそるとりのネタバレレビュー・内容・結末

ミッシング(2024年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

吉田監督が好きなので鑑賞。
今作は内容よりも演技のパワーがすごかった。

登場人物がガラス越しに喋るけど内容が聞こえないシーンや、逆に物語に無関係の人々がメインキャストの奥で怒鳴り散らす声が大きく聞こえるシーンが何回かある(ヤクルト1000売り切れでブチ切れる客とかね)。
「自分が伝えたい真実を聞いてもらえない。それどころか、嘘偽りであっても好奇心をそそる内容のほうが人々は信じるし、多くの人に届いてしまう」という報道やSNSの歪みを描いているのかなと感じた。
人は自分が見たいようにしか物事を見ない、とかも思った。

スーパーで再会したママ友が主人公が推してるアイドル?のTシャツを着てて、主人公は娘が失踪する直前までそのアイドルのライブに行ってたことをネットで叩かれまくるしライブに行かなければ娘は失踪しなかったんじゃないかと後悔してるんだけど。
このママ友は恐らくアイドルを推してるからって他人から非難されることもなく、それで娘を失うなんて事もなく普通に幸せに暮らしてるんだなーと想像したら、主人公との対比でしんどかった。
どういう意図でママ友にあのTシャツ着せたのか気になる…特に意味ないのかな。

石原さとみが終始苛立ちや悲しさをぶち撒けまくるんだけど、恋愛ドラマのイメージしかなかったので正直こんな演技ができる人だと思ってなかった。
警察で泣いて失禁するシーンは表情と泣き声から伝わる絶望感がすごくてゾッとした。もちろんいい意味で。

青木崇高も良かった。
感情的にならず、冷静に自分ができることをしながら妻を支える夫の姿がとてもぴったり。
煙草を吸いながら静かに泣くシーンがかなり印象的で、なんかもう美しかった。

この監督の作品は、追い詰められたり何かに執着している人間の弱さや闇の描き方が良いなあと思う。
役者陣も体当たりで演技してくれる人が多く見応えがあるので、次回作にも期待。