アベタイキ

君たちはどう生きるかのアベタイキのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

これまでにない力強さを感じる宮崎作品だった。
5歳のとき生まれて初めて映画館で『もののけ姫』を観たときの衝撃を思い出した。
劇場を出るとき「わけわかんなかったけど面白かった!」と大騒ぎしていた高校生集団が微笑ましかった。
まじ全然それで終わりなんだけど感想的には。子ども向けの皮を被った大人置いてけぼり映画だと思うしジブリって。でも珍しく思ったことを残しとく。

冒頭の火事のシーン、すべてが歪んでいく描写が素晴らしくて釘付けになった。
眞人のトラウマであることはもちろん、「戦時中のお話だけどこれから見せるのはあくまでもファンタジーだからね」って隠れた説明にもなっている気がした。アオサギがぐにょんって塔の窓に入っていくのとかは完全にそうだけど。

子供から大人まで坊主ばかりで戦中なのにおしゃれに髪を伸ばしている眞人とお父さんが特徴的だった。見るからに良いとこ育ち。血の出し方も思いっきりやってて良かった。史上最もセリフの少ない主人公だった気がする。終盤にもあるんだけど要所で音を消す演出良かった。いじめられてるとことか回廊歩いてるとことか。

ペリカンの言う「地獄」に着いてすぐ、波にさらされた眞人の靴が砂に沈まない描写で「うわぁ宮崎駿だぁ」と思った。質量がないというか、「あ、ここは明らかに違う世界なんだな」ってさり気なく一瞬で説明する感じが。でも見当違いかなぁ。その後めちゃくちゃ波も風も食らうし。
てかあのペリカンしんどかったなー。あんなに愛らしい存在さえ生きるために食うしかない。黙って埋めてやるのも良かったな。

次から次へいろんな世界観の場面に移っていく気持ち良さと、セルフオマージュが大量にあってにやにやした。
少なくともハウル千と千尋ナウシカトトロもののけ魔女宅は感じ取った。いや全部あったな。当たり前か。
これまでのジブリ作品はこの世界を切り取った一部だったのかも、と思わせるのはすごいやり方だと思った。本当に引退作だとしたら完璧な造りなんじゃないかなぁ。
布とか革とか陶器とか肉とか水とか、相変わらず質感が見てて気持ちいい。音も気持ちいい。HAYAOが引退したらこれ見れなくなっちゃうのかなーやだなー。IMAXで観たのは正解だったなー。

クライマックスで世界を託された眞人が自分の世界に戻ることを選んだのは、お母さんが残してくれた『君たちはどう生きるか』を半分くらい読んでいたからこそっていうのもあるのかなぁ。「自分にも友達ができた」のが大きいのはもちろんなんだけど。これはさすがに読んでみたいなと思った。

先日のニュースもあってなんでこんな醜いんだろう社会って、とうんざりしていたタイミングで観れたのは自分にとって救いだった。ちょっと冷静になったらもっかい観たいなー!