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君たちはどう生きるかのnorikoのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

君たちはどう生きるか、正直一回では全ての隠喩を掬いきれなかった。

自分をわざと傷付けて溶け込めてない自分の状況や苦しさを出そうとする眞人くんのいじらしさで主人公は好きにならざるを得なかった……。
なつこさんにはなつこさんの地獄があるのも承知なんだけど、初対面でお腹触らせて弟か妹がいるの、は割とやりすぎではと思ってしまう。それなのに傷付いて下の世界に行ってしまったのは、上手くそういう距離感を取れない人なのかなぁとか思ったり、姉といつも比べて生きてきた人なのかなぁと思ったり。

冒険の時間はもう一回みたら理解が変わりそう。とにかくあれこれ詰め込まれていたけど、すこしストーリーとしては中弛み感はあったかなぁ……。ただ一つ一つの映像の美しさ、生命の描き方は圧巻。

ペリカンやオウムは下の世界では悪い奴に見えるけれど、彼らはそこでそうやって生きなければならなかったという地獄ではあり……。オウムの王とかちょっと憎たらしいけど、オウムたちからしたらリーダーシップあふれる理想の王様だもんね。

そして謎の大叔父。墓石を彷彿とさせる石の積み木を押してバランスをとりながら綺麗な世界を作ろうとしている存在。結局神なんていないんだよなと思わされるなぁ。眞人に継いでほしい、はやく積み木をつんでくれ、と言うけど、実際大叔父が作った美しい世界はそれなりに歪みがあって、結局のところ大叔父はひとつひとつの生命に対してある程度距離をとった見方しかできなくなってしまっているなぁと思った。他者への細かい興味の欠如が神となる第一歩なのかも。
それとは違って眞人くんは「自分で自分を傷つけた」と告白して、他者と距離をとって清廉に過ごしているようで実は内面では葛藤があること、周りに自分の心を見てほしいと思っていることが伝わってよかった。あとオウムの王がふざけてる!って積み木を壊すのも。本当に自分の仲間を思っている人は、あんな机の上の空論で世界を作るなんて信じられないよなぁ……。

お母さんはまあひみちゃんだよね?と思いながらも、本当にその通りでちょっとそこまでたくさんの感情はないかなぁ。大叔父との間に何かしらの特別な感情がありそうだけどここだけではわからず。

最後眞人くん、なつこさん、青鷺とかの仲間達チームに加えて、ペリカンもオウムもこちらの世界に来れてよかった。どちらも下の世界だからあの生き方をせざるを得なかったわけで。
ただこちらの世界で、綺麗に生きられるかなんてわからないけど。それでも家族みんなで東京に帰って、そうして宮崎駿は進んでいくのかと思った。


好きなのは圧倒的に風立ちぬ、なんだけどやっぱり宮崎駿さんには永遠に描き続けてほしいな。点数がつけられない……。
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