千里

君たちはどう生きるかの千里のネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ジブリ最新作にして、日本を代表する名匠宮崎駿監督最新作ともなれば勿論鑑賞。タイトル通り「人生をどう生きるか」を描いた秀作だった。

戦後の厳しい世の中、新しい家族、新しい環境、という複雑な現実。そんな現実に対して悩み、負の感情を持ち、逃げたくなる時もある。このような状況をファンタジックな世界という比喩表現で描いている点が、本作の最大の評価ポイントなのではなかろうか。そしてその中に永遠に閉じ籠る者、ひと時閉じ籠りたくなる者、悩み苦しみながらも前を向いて生きていこうとする者、様々な人間性が描かれている点が素晴らしかった。

辛い現実から逃げ続けていた大叔父。青春を生きる中で何かあってひと時逃げたくなった眞人の母久子。妊娠の辛さと新たな家族に戸惑い逃げたくなった眞人の新たな母夏子。新しい環境や新たな家族と馴染めないことに悩む主人公眞人。あの世界に迷い込んだ人は皆現実から目を背けたくなった人たちであり、そういった人たちの心そのものがあの世界として描かれている。あの世界の中で眞人は自分の弱さや悪性の面と向き合い、また前を向いて生きていくことを選ぶというラスト。王道だけどあっさりとした終わり方が今作にとても合っていて良かった。

あの世界の表現自体もこれまでの宮崎駿監督作に似通った部分が多々あり、これまでの集大成感が凄かった。ただ逆に言えばこれまでと似通った表現が多かったので、新鮮味は薄かったかも...そういう意味で"面白さ"という点では歴代の中でも下の方(最下位とかではないけど)だったかなという印象。あと奥さんの妹と再婚する父親に関して、当時の時代性的に見たらよくあることなのかな?それとも今以上に厳しい目で見られたりするんだろうか。気になるところ。それにしても、82歳にしてこれだけのものを作れるのは流石と言わざるを得ない。
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