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君たちはどう生きるかのmitoのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
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2023年75本目。
引退発表した宮崎駿の新作。
同名小説に着想を得て製作した作品。

小説はあくまで着想で、内容は全く非なる内容。一応、主人公が劇中にその小説を読んで思い巡らす場面はあるが、関連度は薄い。

10年振りとなる宮崎駿の新作。
日テレといったファミリー層を狙った…というしがらみも無くなり、創りたいものを創り上げるという気概を感じられる。

ストーリー的には宮崎駿が好きな物を詰め込んで、今までの人生に対して問いただすと同時に悔いのない人生であった…と宣言するもの。
この語り口は晩年の映画監督が描きがちな内容ではあるので、例に漏れず宮崎駿もやりおった…、という印象。
まあ、風立ちぬの時点でそういう語り口は垣間見えていたが、それを更に超えて自分語りが強くなっていると感じた。

まあ、そうなる事は覚悟していたし、何ならまだマイルドで話として成立させようとしている分好感が持てる。

気になったのは今までの作品に比べて行間が異様に長いこと。
登場人物の移動や作業等をより詳細に描きこんでおり、細かい描写の書き込みが行われている。
その点も含め、兎に角、この映画を見て作画による動きの豊かさに驚かされる。

宮崎駿が監督であるだけで、ここまでキャラクター達の動きに躍動感が出るものか…と感動すら覚えた。
キャラクターの走り方や波や船の動き、鳥達の飛び方や火の粉の舞い方全てが素晴らしかった。

ジブリ派生で誕生したスタジオポノックは絵柄こそジブリだが、この動きは真似出来ていない。
まあ同じジブリ派生のでぼぎゃらりーは背景専門として見事な仕事をこなしているので、全く継承されていない訳でもない。

そういった感動、憂いを残しつつも、宮崎駿という人物の特異性を十二分に味わえた作品。

個人的には結構刺さった。
もう一作品くらいは作れるんじゃないか(笑)是非。
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