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君たちはどう生きるかのsoratoのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
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内容ネタバレなしの所感です、落ち着いたら内容についても書きたいな

タイトル通り「どうするか、これからは君たちで考えなさい」と宮﨑駿に直接言われているように感じる作品

映画館で観て、戸惑いながら、咀嚼に3日かけてこの感想を書きます

初めは、好き放題やって去っていった……どうしろっていうんだ、置いていかないでくれ駿……と縋りつきたくなってしまったのですが、
ありのまま宮﨑駿の内面を曝け出したうえで、私たちにどう受け取りどう考えるかの余地をくれたのだと思うことにしました
例えば駿のアニメを解釈することに人生を捧げた人がいたとして、その人が今際の際に見る走馬灯もこんな映像なんじゃないかな

これまでの駿作品(特に壮年期)は、大衆にもわかりやすいよう展開を噛み砕いた、ストーリー優先で親切な物語がほとんどでした
それが今作は、既存の物語らしい枠組みをゆるめてより駿の根源に近い場所へ迫ったことで、脳みそから直接出力されたような、抽象的で難解な場面が多々登場します
今までは受動的に受け取るだけである程度理解できたものが、どういうこと?と能動的に頭を捻らないと意味を見出せない
だから「考えろ」と言われている気がしたのです
なんだ?なんだ?と前のめりになって鑑賞し、一体あれはどういう話だったのか現実と照らし合わせてよく考える……そういう作業をしなさい、と
突き放されているようであり、これまでの受身な態度を怒られているようでもありながら、同時に宮﨑駿から我々への期待とエールでもあるのかな、と!ポジティブに捉えれば!

駿がずっと物語の中に描き続けてきたもの……戦争、老い、傍にある死、目を背けたい悪意、本当は醜いもの、そういった現実の中に生きながら、美しいものを見出したい、美しく創りたい、という強い気持ち……矛盾をはらむその狭間で苦しみ続けた人が見せてくれる夢
まだわからないけど、苦しいけど、それでも考えるのをやめられない、手を止められない、そういう人たちの肩に厚い手を置いてくれるような作品だと思います
背中を押してくれる感じじゃなく、あくまでそっと手を添えてくれた感じの

宮﨑駿のいなくなった世界って考えたくないのだけどでもいつかはやってくるよな、続く者ははたして現れうるだろうか、ということを劇中にしんと考えてしまいました

最後に流れる米津玄師の主題歌は、この物語そのものの歌ではなくて、アニメーションを創り続けてきた宮﨑駿を著した歌だったのですね
この人の解釈の高度さと雄弁さたるや、いつも脱帽します

まだまだ言いたいことあるけど、とりあえずここまで!
点数はまだつけずにおきます
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