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君たちはどう生きるかのnekonomachiのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

まず若い世代には理解しがたいだろうと思ったのは、真人の母親が亡くなって1年で母親の妹と再婚してお腹に子供までいること。

子供の頃に近所にそういう老婦人がおり、妻が亡くなると姉妹を後妻にするのはよくあることだったと聞いて驚いた記憶があります。
見合い結婚が普通だった時代ならではのことですね。

でもそれは大人の事情。
大好きな母を亡くしたばかりの真人にとっては納得できるはずもなく、表面上は従うフリをしても自分自身についている嘘が青鷺の形となって心をかき乱す。

憎む一方で母の面影をたたえる夏子を慕う気持ちもあり、平静を装う裏で真人は激しく苦悶している。

学校にも居場所はなく、怒りと無意識に関心をひくための行動として真人は自分を傷つけてしまう。誰にも気づかれたくなければ人から見えないところに傷をつけたでしょうから。

夏子も精神的な苦しみとつわりで床に伏せってしまう。

門の向こう側は大叔父のいる死者の世界。死の誘惑と戦いながらも最終的に真人は夏子を母親として受け入れることができ、その頃には傷も癒えていた。

不可思議な現象がたくさんあってすべては理解できないけれど、真人の葛藤と成長の物語だと私は受け取りました。

死の誘惑についての補足です。
ペリカンに押されて門をくぐり、捕らえられて刃物をペリカンが研いでいた。
ペリカンは死のメタファー。

大叔父に説得されて死の世界に留まろうかと迷っていたけれど、
白いふわふわのこれから産まれるはずの命をペリカンが食べているのを見て、自分の弟の命を守らなければ!
と現実の世界にもどることを決意したのだと思います。

だから自分の中の悪意ともいえる青鷺は敵ではなくなり和解して友だちになれたのでしょうね。

あとあの門はダンテの地獄の門を思い起こさせるけど、かなり簡素な造りなのは思春期の子どもにとって死への境界は現世とそこまでキッチリと隔絶されていないからなのかなと。

途中の様々な出来事については他の方の考察を楽しみにしています😉
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