このレビューはネタバレを含みます
孤独感を抱えた子供が日常から離れた非現実の中で親を救い出す行動を通してアイデンティティを確立してゆく……とゆうお話の構造は【千と千尋の神隠し】に似ている。
ただし亡くなった母親とその妹の新しい母親、そこの葛藤が伝わりやすく描かれていないために、行方不明になった新しい母親を探す冒険とゆう行動の動機がいまいち弱い。
奔放なイマジネーションの洪水には圧倒されるが、ストーリーラインとゆう部分ではこれらの描写の羅列に誤魔化されている感じはする。
もっともそれは【もののけ姫】以降の宮崎駿監督作品に顕著に現れているが、脚本を書かずに作り始めるとゆう無謀な作劇方法を採用している以上、仕方ないとも云える。ボクはまるで認めないが。
この映画を観た人の感想を先に訊いていると一様に難しいとゆう答えが返ってきたのだが、恐らくこれは戦時下での田舎への疎開とゆう特殊な状況設定を理解しておく必要がある。
当時東京から来た多くの疎開児童は疎開先で虐められた現実があり、そんな描写もあるのだが、その現実からの主人公の少年の逃避願望がファンタジー色溢れる冒険の根底にあると解釈した。
めくるめく展開はむしろ子供の観客層を楽しませる気もするし、ボクの感想としては可もなく不可もなくなのだが、宮崎駿監督のおそらくは遺作になるかもしれない作品で少年の冒険を主題に持ってきたのは【天空の城ラピュタ】を思わせて嬉しい部分でもあった。
