このレビューはネタバレを含みます
宮崎駿的なモチーフで埋め尽くされているフェティッシュの感じとか、戦火を異界においてワラワラ(生)を助くものとして反転させる演出とかはおもしろいと思ったけど、そういったイメージの種々が先行し過ぎてストーリーそのものの魅力に欠けているというのは否定できない。
「母」にせよ「誕生」にせよ、禁忌としての産屋にせよ、夏子お母さんと(あざとく)呼び名を変える展開にせよ、そのイメージにこびりついた伝統的家族観みたいなのは嫌だったな、舞台当時たして考えればそうかもしれないけど、今つくる映画としてはもう黴臭いだろう。
あと宮崎駿的世界における他者はみな自己に優しい。嘘つきの青鷺も最終的には懐柔されて自分を救いにくるわけだし。そこに彼自身の世界がどこまで投影されているかはわからないけど、少なくともまったく折り合いのつかない絶対的他者というのはジブリ作品に出てこない。