ゆきゆう

君たちはどう生きるかのゆきゆうのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.9
観に行った知人の感想すべて「どう言っていいかわからない…」
だったので観に行ってみました。
観に行って、たしかに感想が分からん、でした。

しかしその中で皆おんなじ感想がただ一つある。
父、マジで気遣いできないな!?無神経すぎだよ!義理の母の子供の産まれる時期が本当に無神経すぎてビックリするんだけど!
以上です。

千と千尋の神隠しをより宮崎駿節をきかせた感じだな、と受けとりました。
みんな同じものを受け取れる作品ではなく、語られるストーリーですら曖昧で、誰かとではなく、この映画と自分が語り合う映画だな、と思いました。
これについて、雑誌ダヴィンチにて水曜どうでしょうディレクターの藤村さんの感想がピッタリ来たので薦めておきます。
映画を見ている間中、これはどういう意味なんだろう、あれはこれは、と考えるというより語り合うような、不思議な映画でした。

以下は映画について個人的に考えた、考察以下の何かです。
戦時中の現実からファンタジー世界へとうつる、というのが話の流れですが、果たして現実とファンタジーの境界はなんだろうか。
ファンタジー世界には意味のわからないものに溢れている、ワラワラだの墓の門だの。
だが、現実だって意味のわからないものばかりだ。特に田舎に帰るとそう思う。行ってはいけない場所、喋ってはいけない人。意味もなく(あるのだろうが話してもらえない)禁止される事柄に、現実とファンタジー世界の違いが果たしてあるだろうか。

語られない事柄を受け入れる。
そのために人間が何をしたか、物語を語ってきた。
そういうものは神話になり、お伽噺になり、人は無意味にもたらされる現実に打ちのめされないように、物語ることで耐えてきた。
つまりこの映画は宮崎駿が現実に耐えるために生み出した物語で、けれど生み出してきた物語たちが、彼が意図したものを与えられてこなかったことも語っているのではないだろうか。

庵野秀明のインタビューで彼は「現実に帰っていける作品を作りたい」と語っていた。だが、自分はそれができていないとも。
自分の作品は現実からの逃避の場になっていて、そこから何かを受け取って現実に生かしてもらえていないと。
あらゆるエンタメにある傾向だが、しんどい現実から目を背ける、麻薬のようなエンタメが目立ってきた。
もしくは辛い現実を剥き出しにしてくるような、意識の高い憂鬱な作品か。

宮崎駿と庵野秀明のつながりを知ったのも最近の素人だが、彼らの意図している作品はそういう作品なのだろうな、と思った。現実に立ち返る物語。無意味で理不尽な現実と折り合いをつけるエンタメ。
そういうものを観た人全てに届けられなかった反省と、それでも現実に帰っていくんだよ、という宮崎駿からの励まし。
それがこの映画なのかな、というのが感想です。

まあそうは言っても現実は辛いので、小ザメちゃんとか黒猫の諭吉さんが側にいる妄想をして、落ち込む事もあるけれど、わたしは元気です。
ゆきゆう

ゆきゆう