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君たちはどう生きるかのksk88のレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.7
宮﨑駿の描写と久石譲の音楽、観ているだけで満たされ浸れる世界は最早ひとつのアート。
それだけでも十分に眼福なのに、個人的には本作の魅力は大きく3点。

ナウシカ、トトロ、ラピュタ、千と千尋、ハウル…諸所に散りばめられた歴代のジブリ作品へのオマージュとなるシーンの数々。ジブリ作品と共に育った世代としては垂涎の連続。

絶対的な存在として登場する大伯父を介して投影される、この世界に数々の名作、人々を"豊かに"する作品を生み出してきた宮﨑駿の思想と視点。風立ちぬが半生を通して自伝的に描かれているのに対し、まさに今の宮﨑駿さんの目線が感じられる。

そして何よりも本作の主軸となる"君たちはどう生きるか"。主人公眞人が、少年にとって最も大きな存在であり心の拠り所である母の死、父の再婚、義母の愛という、多感な少年時代に目まぐるしい変化を余儀なくされながらも、内なる深層世界で葛藤と向きあいながら強く成長していく様。事象は違えど、誰もがこの時期に様々な外的環境の変化に呑み込まれ、その余りに巨大なうねりの中でどう生きるか、生きていくかを問われ、その曇りなき眼で自己と向き合い、自分なりの答えを見つけていく。

複雑なテーマを緻密に重ね合わせ、ひとつのストーリー、作品に落とし込んでいるところが本当に秀逸。

宮崎駿監督の最高傑作という意味では「風立ちぬ」に及ばずも、最後の集大成と呼ぶに値する作品だと思う。

この作品を観れて良かった。
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