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悪は存在しないのksk88のレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.6
冒頭のシーンがとても良かった。
曇天と針葉樹のコントラスト、バイオリンの音楽。
心地好く、これだけでずっと流していられる。ラストの夜空との対比もgood。


序章。
枯れ枝、雪を踏む音
清流のせせらぎ
野鳥の鳴き声

豊かな自然を長尺で、贅沢な映像作品。
考える、感じ取る、頭を空白にする。
僕が映画に求めているものが、必要十分に満たされていた。



好きなシーン。
開発計画の住民説明会。
事業者と住民の軋轢を見事に描いている。
開発に携わる立場として、
自然を好む立場として、とても面白い。


幕間。
数字とビジネスで見るコンサルと社長、わかりやすく表現されてていいね。
高速でのドライブシーンは凡庸で良い。


テーマ。
悪は存在しないのか。存在しない
バランスが大事
人それぞれの思惑、生き方
正解はなく、自分が決める。
悪とは他者との違いの否定から生まれる


最後の転、結。
作品の大半を占める映像美、音楽、ストーリーによるエンターテイメント提供と、観客への問いの尺バランスが個人的に絶妙。
解釈を問われる時間のざわざわ感、
五感フル回転で答えを探すあの感覚。
長過ぎると芸術気取りの自己満作品だし、
無いと味気ない無味素朴作品になってしまう。
バランスが大事。秀一。


水は上から下へ流れる、それだけ
上に棲む者には義務が生まれる


役者さんも良かった。
映像も音楽も良かった。
総じて良かった。また観たい。
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